質問者:
一般
KOKONOE
登録番号1854
登録日:2008-12-12
ご迷惑をおかけします。みんなのひろば
サルスベリ、ヒメシャラの木肌について
サルスベリやヒメシャラの樹はある程度生長すると表皮はとれて木肌がつるつるしてきます。一方、コルク形成層が顕著でコナラ属のように厚い樹皮で覆われていたり、アオギリやウリハダカエデのようにクチクラの影響でなかなか剥離しない樹もあります。
このように樹種によってそのあらわれかたは様々ですが、前述のサルスベリ、ヒメシャラについては、ある著名の文献に「ヒメシャラやサルスベリの木肌はつるつるしています。これは篩部の形成が悪いからといわれます。」 と書いてありました。
果たしてそうなのか疑問に思ったので著者に連絡をしたいと思いました が、連絡がつきませんので、ここでお教えいただこうと思いまして投稿させていただきました。大変すみませんがよろしくお願いいたします。
外樹皮の更新はコルク質や死んだ篩部組織の積み上げによって行われるであろうと素人判断で思います。文献に書いてある「篩部の形成が悪い」ということの意味ですが、篩部の持つ役目は維管束のなかで、有機養分の通り道、貯蔵、植物体の支持を行う複合的なものと理解しています。「形成が悪い」ということになれば、この両種については他の樹種よりも篩部機能が劣っているということになるのでしょうか。もしそうならこの種たちが年々生長することに差しさわりはないのかなぁと思います。
文献を引き合いに出した質問で誠に恐縮ですが、以上ご指導をよろしくお願いいたします。
KOKONOE
KOKONOE 様
> 「篩部の形成が悪いから」という理由は理解できません。
おっしゃるように「幹が太くなるにしたがって外樹皮の更新はコルク質や死んだ篩部組織の積み上げ」であると理解するのが妥当でしょう。既に十分知識がおありだとは思いますが、外樹皮の脱落について基本的なことを述べておきます。
樹木の幹(茎)や枝は若いときは一番外側は表皮で覆われその下に皮層という組織があります。この形態は草本植物でも同じです。樹木は形成層の活動によって内側に木部、外側に篩部を形成して肥大成長を続けます。その結果、表皮と皮層組織は裂けてしまい樹幹から剥離脱落してしまいます。したがって、木本植物ではうんと若い幹や枝でなければ、表皮は存在しません。これに代わってコルク組織が形成されて樹幹を保護することになります。形成層からできた篩部(2次篩部)の内部中程にコルク形成層というのができて、その活動で外側にコルク組織と内側にコルク皮層を作り出します。この3つはまとめて周皮と呼ばれ、薄い層です。周皮の外側の細胞は細胞壁は肥厚し、細胞は死んで、固い組織に代わります。この部分を外樹皮と呼んでいます。内樹皮は周皮の内側の生きた篩部の部分を指します。この部分は光合成産物などを輸送する篩管が機能していますので、傷がつけば植物にとって大きなダメージを与えることになります。コルク形成層は一度できたらいつまでも機能しているわけではなく、やがて機能を失い、代わりに新しいコルク形成層が篩部内にできて活動をはじめます。古いコルク層は外樹皮の一部になっていきます。このように、外樹皮は通常何層もの古いコルク組織と生きていない古い篩部とから構成されています。幹の肥大成長とともに、外樹皮には亀裂が入りやがて脱落していきます。脱落のパターンは種によって特徴があります。脱落した直後の木肌は新しい周皮のもので、赤紫のような色合いをしていることが多いようです。
ところでサルスベリの木肌がつるつるなのは、コルク層に富んだ外樹皮の発達がわるいことを示すと思います。実際に観察したわけではないし、また、そのような文献は知りませんが、このことは二次篩部におけるコルク形成層の発達と周皮の形成が小さいということによるのでしょう。「篩部の形成がわるい」ということはこのことを指しているのかもしれません。」
> 「篩部の形成が悪いから」という理由は理解できません。
おっしゃるように「幹が太くなるにしたがって外樹皮の更新はコルク質や死んだ篩部組織の積み上げ」であると理解するのが妥当でしょう。既に十分知識がおありだとは思いますが、外樹皮の脱落について基本的なことを述べておきます。
樹木の幹(茎)や枝は若いときは一番外側は表皮で覆われその下に皮層という組織があります。この形態は草本植物でも同じです。樹木は形成層の活動によって内側に木部、外側に篩部を形成して肥大成長を続けます。その結果、表皮と皮層組織は裂けてしまい樹幹から剥離脱落してしまいます。したがって、木本植物ではうんと若い幹や枝でなければ、表皮は存在しません。これに代わってコルク組織が形成されて樹幹を保護することになります。形成層からできた篩部(2次篩部)の内部中程にコルク形成層というのができて、その活動で外側にコルク組織と内側にコルク皮層を作り出します。この3つはまとめて周皮と呼ばれ、薄い層です。周皮の外側の細胞は細胞壁は肥厚し、細胞は死んで、固い組織に代わります。この部分を外樹皮と呼んでいます。内樹皮は周皮の内側の生きた篩部の部分を指します。この部分は光合成産物などを輸送する篩管が機能していますので、傷がつけば植物にとって大きなダメージを与えることになります。コルク形成層は一度できたらいつまでも機能しているわけではなく、やがて機能を失い、代わりに新しいコルク形成層が篩部内にできて活動をはじめます。古いコルク層は外樹皮の一部になっていきます。このように、外樹皮は通常何層もの古いコルク組織と生きていない古い篩部とから構成されています。幹の肥大成長とともに、外樹皮には亀裂が入りやがて脱落していきます。脱落のパターンは種によって特徴があります。脱落した直後の木肌は新しい周皮のもので、赤紫のような色合いをしていることが多いようです。
ところでサルスベリの木肌がつるつるなのは、コルク層に富んだ外樹皮の発達がわるいことを示すと思います。実際に観察したわけではないし、また、そのような文献は知りませんが、このことは二次篩部におけるコルク形成層の発達と周皮の形成が小さいということによるのでしょう。「篩部の形成がわるい」ということはこのことを指しているのかもしれません。」
JSPPサイエンス・アドバイザー
勝見 允行
回答日:2008-12-12
勝見 允行
回答日:2008-12-12