一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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メンデルの実験について

質問者:   高校生   ヒロシ
登録番号0186   登録日:2005-01-04
はじめまして。

以前自由研究探しに中学の理科の資料集を見ていると、メンデルの実験の結果を見つけました。
その表にはメンデルが調べた7つの形質全ての優勢、劣勢がほぼ3対1になっていましたが、手作業で分けてもこんなにきれいに3対1と出るのでしょうか?

たとえば茎の高さや種子の形は、高い、低い、丸い、しわがあるの他に「どちらでもない」、というのがあると思います。
エンドウは優勢、劣勢が他に比べてはっきり出らしいですが、丸いものは丸く、しわがあるものはしわだらけで、高い低いも一目でわかるぐらいはっきりしているのでしょうか?

よろしくお願いします
ヒロシさん

メンデル著の「雑種植物の研究」(岩槻邦男・須原準平訳 岩波文庫)に如何にしてメンデルがエンドウの7つの形質を選んだのか、また「どちらでもない」という曖昧さをどのように排除したのかが詳しく書かれています。

まず純系と言えるような株をつくるまでに自家受粉を繰り返しています。そうして、7つの形質を最終的に選んだ経過を記しています。

さらにたとえば、「茎の長さの違い」をみる実験では、確実に形質が識別できるようにするために、常に茎長が6フィートから7フィートのものと、0.75フィートから1.5フィートのものを組合わせるような工夫を行ったとしています。
それらのうち、1フィート(約30.5 cm)と6フィート(180 cm)の長さの個体を組合わせた雑種では、例外なく6フィートから7フィート半の茎長のものが得られたとも報告しています。

また種子のかたちをみる実験では、必ず熟した時期のものを判定に使い、円形または円形に近く、表面の凹凸がわずかなものと、不規則に角張って深いしわのあるものとを組合せています。その結果、雑種一代目の種子のかたちは、円形またはこれに近く、くぼみがあってもわずかであったことから、「どちらでもない」ものに分類されるようなものがなかったと記しています。

以上のように、メンデルが純系を得るための周到な準備を行い、交雑実験に当たっては、交雑をする個体を慎重に選んでいることがおわかりになるかと思います。そのため、20世紀初頭にメンデルの再発見をした3人の生物学者のデータでも、メンデルと同様に極めて再現性の良い結果が得られています。

なお、統計学者であるフィッシャーがメンデルのデータが綺麗すぎるという批判をしましたが、メンデルにならって交雑の際の個体を選ぶ慎重さを踏襲した3人の生物学者のデータでも、データの綺麗さにおいてはメンデルと有意な差が見られません。そのようなわけで、フィッシャーの批判は当たらないとされています。
奈良女子大学
 鈴木 孝仁
回答日:2008-08-07
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