一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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原形質流動について

質問者:   大学生   ぽん太
登録番号1863   登録日:2008-11-30
授業でオオカナダモの観察を行い、その後資料を集めている最中にわからないことがありましたので質問させていただきます。

1.原形質流動は細胞膜内のアクチン繊維のレール上をミオシンが滑り運動を起こすことによって流動しているという文献を見つけたのですが、ミオシンはアクチン繊維の終点まで進んでしまうとその後どうなるでしょうか?終点部で分離して自分で作った流れに乗り他のアクチン繊維に再び結合するのでしょうか?

2.オオカナダモの葉緑体は、強光下では細胞の側面で流動し弱光下では細胞の上面と下面に静止している様子が観察できたのですが、葉緑体が弱光下で静止しいている状態でも細胞内では原形質流動は行われているのでしょうか?
ぽん太様

日本植物生理学会みんなのひろば質問コーナーのご利用有り難うございます。

ご質問への回答を、藻類の原形質流動の専門家である大阪大学大学院の高木慎
吾先生に御願いして、以下の様な回答を得ましたので、お送りします。


1.回答
 アクチン繊維は、植物細胞内では多くの場合、束構造を作っています。原形質流動の規模が大きいほど、束も太くなるようです。そのような束の中に有る一本一本のアクチン繊維が、どこから始まりどこで終わっているのかをきちんと調べた例はありません。アクチン繊維自身、静止しているものではなく、常に片方の端で伸びながら、もう片方の端で縮むという、ダイナミックな性質を持っており、そのようなことを調べるのが技術的に非常に難しいためです。
 試験管の中で一本のアクチン繊維に沿って滑ってきたミオシンは、端まで来ると離れて溶液中に飛び出し、そのままになります。細胞内でアクチン繊維の束に沿って滑っている場合は、次から次へとアクチン繊維を乗り換えている可能性もあると思われます。原形質流動の研究材料として有名な車軸藻の節間細胞では、原形質流動に使われているミオシンは全体の1%程度であるという報告もあります。ミオシンは、ある時はアクチン繊維に沿って滑り、またある時はアクチン繊維から離れることを繰り返しながら原形質流動をひき起こしているのかもしれません。


2.回答
 注意深く観察していますね。弱光下で細胞の上下面に葉緑体が静止している時、それらの葉緑体は、細胞骨格の働きによって積極的にそこにつなぎとめられていると考えられます。そのような状態でも原形質流動は起こっています。静止している葉緑体の横を、核が平気で動いていくような場面を見ることができるかもしれません。ただし、強光下で見られるような、細胞の側壁に沿ったタイプの(周回型と呼びます)原形質流動ではないと思われます。
 異なる光条件の下で葉緑体の分布が変わる現象については、下記の参考書などで調べてみてください。

植物まるかじり叢書2「植物は感じて生きている」瀧澤美奈子著、化学同人



高木慎吾(大阪大学大学院)
日本植物生理学会広報委員長
徳富 哲
回答日:2008-12-15
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