一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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葉を火であぶると音が出るのは?

質問者:   一般   京の山花
登録番号1865   登録日:2008-12-02
 リンボク(バラ科)の葉を火であぶるとパチンと音がするので、同定の一つの指標にしていますが、これはどのような現象なのでしょうか?
それがどうしてリンボクでおきるのか?
また他にも同じようになる植物があるのか? などお教え下さい。
 モチノキ科などの植物の葉を火であぶると死環ができるのは70℃前後で酵素が暴走して周辺の物質(タンニン?)を変質させることによっておきると聞いていますが(これでよろしいですか?)、リンボクの場合は葉内の空気が火であぶられることによって膨張して行き場を失い、気孔の孔辺細胞を破壊しながら一気に噴き出す音なのかな?と自分なりに考えてみましたが、調べる手だてを持っていません。
もしそうであれば、リンボクは他よりたくさん空気を貯めている? どこに?
それとも他より気孔が少ない? 小さい? クチクラ層が厚い? …
色々考えてみましたが、全く的外れなことを考えているのかもしれません。
どうか宜しくお教え下さい。
京の山花さま

 みんなのひろばへのご質問有り難うございました。頂いたご質問の回答を東京大学の寺島一郎先生にお願い致しましたところ、熱すると音を立てて弾けるソヨゴで実験して下さり、その結果に基づいた以下のような回答をお寄せ下さいました。寺島先生がなさったと同じような観察をリンボクでなさったら如何でしょう。


寺島先生のご回答

火であぶるとバチンと音がする葉をもつ植物に、ソヨゴがあり、いくつかのサイトに、

「ソヨゴは葉を熱すると膨れてパチン と音を立ててはじける。それからフクラシバという別名がある。」

のような記述があります。モチノキ科のソヨゴは教室の近くの生け垣にありますので、実験してみました。ガスストーブのかなり強い火であぶると、裏側の表皮がぷーっと膨れてパチンとはじけました。葉脈の周りにある維管束延長部が表皮にびしっとくっついていると、表皮がプーッとは膨らまないはずなので、表皮に維管束延長部がくっついていない構造をしているのが、膨らんではじける「必要条件」だと思います。このような葉を、葉に仕切りが少ないことから、等圧葉とよびます。落葉樹よりも常緑樹に多く、葉を日にかざしてみたときに明るい網目が見えないということで判断できます。網目がみえれば、その一部屋一部屋がわかれているので、異圧葉とよびます。必要条件と書いたのは、近くに生えていたモッコクの葉は等圧葉ですが、表皮と葉肉細胞との接着が強いようで膨らみませんでした。ジンチョウゲは表皮と細胞の接着が少ないので、膨らんではじける可能性があると思います。

ソヨゴでは、火であぶったことにより葉の内部の水分が蒸発し、裏側の表皮がぷーっと膨れて破裂するときに音がするというのは確認できました。リンボクも等圧葉なので、裏側の表皮がぷーっと膨らんでパチンと破裂するかどうか、確認なさってはどうでしょうか。


寺島 一郎(東京大学)
JSPPサイエンス・アドバイザー
柴岡弘郎
回答日:2008-12-15
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