一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

チェックリストに保存

キク科はなぜ最も進化した双子葉植物なのでしょうか?

質問者:   会社員   田中
登録番号1873   登録日:2008-12-07
植物の参考書に、キク科は最も進化した双子葉植物という記述がありました。最も進化した植物というのはどういう事なのでしょうか。繁殖力などが強いということでしょうか、遺伝子分析で、キク科が分かれたのが時代的に新しい、またはDNAが複雑ということなのでしょうか?
インターネットで検索しても出てきませんのでお教えください。
田中 さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
植物の分類体系は形態的特徴でグループ分けする方法からDNAの配列の近縁性でグループ分けする方向に変わってきています。進化、系統分類がご専門の基礎生物学研究所 長谷部光泰先生に伺い次のような解説をいただきました。末尾にあげられたホームページでは「9.被子植物の系統・進化・多様性」の項目が詳しい解説となっています。是非ご参考になさってください。


「最も進化した」という言い方は、誤解を招く表現ですよね。田中さんのご質問のとおりで、何を持って進化したとするかの定義が曖昧だからです。時間を基準とするなら、全ての生物は、誕生以来、同じ時間だけ進化しています。今生きている(現生の)サルもヒトも同じ時間をかけて進化してきました。複雑さという点だとすると、キク科よりも複雑な形態を持つ被子植物はたくさんあります。乾燥に適応したという点だとしても、サボテンの方が適応しています。可能性としては、「最も種数が多い」の意味ではないかと思います。

「原始的植物」「高等植物」「下等植物」もよく使われますが、同じく誤解を招いています。「原始的」は「祖先と似た形態を持っている」や「単純な形態を持っている」の意味で使われることが多いようです。高等植物higher plantsの元々の意味は、キリスト教で神に近い植物を指したものです。科学の世界では、神への近さは関係ありませんから、高等、下等を使うのは変な話です。被子植物は他の植物に比べて複雑な形態を持っているから高等植物だという研究者もいます。しかし、見る場所によって複雑の度合いは違います。たとえば、1倍体を考えると、コケ植物(下等植物と呼ばれる)の方が被子植物よりもずっと複雑です。また、最近の系統解析から、単子葉植物は双子葉植物の中の一系統であることがわかり、単子葉植物、双子葉植物という2大分類は使われなくなりました。現在は、基部被子植物(被子植物の系統樹の基部で分岐したという意味)、単子葉植物、真正双子葉植物に分類されます。

キク科の系統的位置とどのようにそれが決まったかは福岡教育大学の福原達人さんのホームページが参考になると思います(http://www.fukuoka-edu.ac.jp/~fukuhara/keitai/
 
長谷部光泰(基礎生物学研究所)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2008-12-15
植物 Q&A 検索
Facebook注目度ランキング
チェックリスト
前に見たQ&A
入会案内