一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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アーバスキュラー菌根菌と共生しない植物について

質問者:   高校生   biospore
登録番号1884   登録日:2009-01-04
植物について興味を持って、色々な本を読んだところ、多くの植物と共生するアーバスキュラー菌根菌について知りました。また、アブラナ科、カヤツリグサ科、タデ科、アカザ科などのアーバスキュラー菌根菌と共生しない植物の存在も知りました。
アーバスキュラー菌根菌がいると、植物に色々な利益がある一方で、他の有害な菌も呼び寄せてしまうこともあるので、後者の植物たちは共生をしていないようですが、アーバスキュラー菌根菌がいないことで得られなくなる利益(無機物や水分の吸収、耐病性など)はどのようにして補っているのでしょうか?
どこかで補わなければ、共生を行う植物との競争に負けてしまうと思うのですが。
biospore さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
年末、年始の休暇がはさまりお返事が遅れました。
菌根菌と植物の共生成立に関する研究は盛んに行われている最中です。特に分子レベルでの研究は世界的に行われています。ということはまだ判らないことが沢山あるということです。ご質問は東京大学の宝月岱造先生に生理生態学的な立場から解説をいただきました。


アーバスキュラー菌根菌が共生していなくても、植物の根が養分を吸収する能力や病気に耐える能力が無くなるわけではありません。共生しないで生きている植物は、共生しなくても生きていけるだけの能力を備えているからです。従って、そういう植物では、「アーバスキュラー菌根菌がいないことで得られなくなる利 益(無機物や水分の吸収、耐病性など)」は、もともと植物自身の根がもっている無機物や水分の吸収能力や耐病性などによって「補っている」と言うことになります。また、アーバスキュラー菌根菌と共生できない植物でも、無機物や水分の吸収能力や耐病性を含む総合的な「競争力」が大きければ、アーバスキュラー菌根菌が共生している植物相手であっても競争に負けることはないでしょう。「共生すると利益がある」というのは、あくまでも同じ植物種でのことで、もともとさまざまな能力が異なる植物種を較べて言えることではありません。

biosporeくんは、共生する植物と共生しない植物の両者が、世の中に存在する理由が気になっているようですので、一言添えます。「アーバスキュラー菌根菌がいると...他の有害な菌も呼び寄せてしまうこともあるので、後者の植物たちは共生をしていない」というのは、一般的に言われていることではありません。抽象的ですが、「共生する能力がないけれども、共生しなくても生きていくだけの他の能力があるので、共生していないでも存在している」と言うことはできます。「他の能力」は、恐らく植物によってさまざまでしょう。将来研究者が1つ1つ明らかにしてくれるのを待って下さい。もちろん、biosporeくん自身が研究者になって、それをしてくれると良いのですが。

宝月 岱造(東京大学大学院農学生命科学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2009-01-22
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