質問者:
会社員
パシリアーノ哲
登録番号1895
登録日:2009-01-12
二酸化炭素濃度上昇で地球温暖化が問題になっている昨今でありますが、植物にとっては成長の上で良いチャンスのように思えます。と言うのは、現在の0.04%近くの二酸化炭素濃度は植物の光合成にとって過酷な薄い濃度ではないでしょうか。みんなのひろば
植物が必要な二酸化炭素濃度
そこで、植物の生育に最低必要量の二酸化炭素濃度は一体どのくらいでしょうか。また、ある程度の酸素濃度も必要だと思われますが、どのくらいでしょうか。
パシリアーノ哲 さま
多くの植物について、横軸に二酸化炭素(CO2)濃度、縦軸にそれぞれのCO2濃度での光合成によるCO2固定速度を描いた図が報告されています。植物は暗呼吸および光呼吸によってCO2を放出するため、CO2の濃度が低く光合成によるCO2固定量が、呼吸によるCO2放出量に等しいとき、すなわち、全体としてCO2固定がゼロとなるCO2濃度をCO2補償点とよんでいます。この他、横軸が光の強さで、光合成によるCO2固定量と呼吸によるCO2放出量が等しくなる点を光補償点とよんでいます。
CO2補償点はC3植物(約26万種の植物の大部分)とC4植物(トウモロコシ、サトウキビ、ケイトウなど、〜1200種)とで異なり、C4植物ではCO2補償点はゼロに近く(0〜5 ppm CO2)、C3植物では50〜100 ppm CO2です。従って、C3植物では50〜100 ppm以下のCO2濃度では呼吸による損失の方が光合成による固定量よりも大きく、光合成によって成長することができません。
C4植物はCO2を葉の細胞内で濃縮をする機構を備えているため、このようにC3植物に比べ低いCO2濃度の中でもCO2固定ができます。そのため、太陽光の下でC4植物は、ほぼ300 ppm CO2でCO2固定量は飽和し、現在の大気CO2濃度(380 ppm)がこれ以上増加しても、CO2固定量のこれ以上の増加は期待できません。一方、現在の地球上の植物種の大部分を占めるC3植物では、現在の大気CO2濃度でCO2固定量は飽和していないため、今後の大気CO2濃度の上昇によって、まだいくらか光合成CO2固定の増加が期待できます。しかし、これらは水が充分に与えられ、温度も適当な条件での結果であり、今後の地球の環境変動によって水ストレス、温度ストレスが増加すれば植物によるCO2固定が大きく影響を受けることは避けられません。
以上のようにC4植物では光合成CO2固定は現在の大気CO2濃度ですでに飽和していますので、たとえば、ビニールハウスの中のCO2濃度を増加させても光合成CO2固定を増加させることはできません。しかし、C3植物については、たとえば、メロンなど園芸作物で、ビニールハウスでCO2濃度を高め生産性向上を目的とする”CO2 肥料“が試みられています。
一方、大気中の酸素濃度はCO2濃度に比べ圧倒的に高く(20.8%)、さらに、光合成が進行している葉緑体でCO2固定とともに同じモル数の酸素が発生するため、自然環境では実際上、常に酸素が葉緑体の周りには存在しています。光合成と酸素濃度との関係は、光呼吸(光合成CO2固定が進行している間にみられる呼吸)が進行するC3植物では、酸素濃度が低下すると、ほぼ大気酸素濃度の低下に比例して光呼吸による損失が減少し、そのため、光合成CO2固定量が増加します。しかし、光呼吸は過剰の光エネルギーを(活性酸素を生じないように)安全に逃がすための一つの過程であるため、大気酸素濃度を低下させ光呼吸を進行できないようにすると、光阻害によって光合成が低下します。C4植物ではCO2濃縮機構によって光呼吸が抑えられているため、低い酸素濃度でもあまり影響はありません。もう一つの酸素が関係する過剰の光エネルギーを消去する安全な機構は、水―水サイクルとよばれる、葉緑体で生じた活性酸素を速やかに消去する反応で、これは、C3, C4植物共に、光呼吸よりもずっと低濃度の酸素、葉緑体で発生する酸素で充分な程度で進行します。いずれにしても、光合成が光阻害を受けないように進行できるためには酸素が必要です。
多くの植物について、横軸に二酸化炭素(CO2)濃度、縦軸にそれぞれのCO2濃度での光合成によるCO2固定速度を描いた図が報告されています。植物は暗呼吸および光呼吸によってCO2を放出するため、CO2の濃度が低く光合成によるCO2固定量が、呼吸によるCO2放出量に等しいとき、すなわち、全体としてCO2固定がゼロとなるCO2濃度をCO2補償点とよんでいます。この他、横軸が光の強さで、光合成によるCO2固定量と呼吸によるCO2放出量が等しくなる点を光補償点とよんでいます。
CO2補償点はC3植物(約26万種の植物の大部分)とC4植物(トウモロコシ、サトウキビ、ケイトウなど、〜1200種)とで異なり、C4植物ではCO2補償点はゼロに近く(0〜5 ppm CO2)、C3植物では50〜100 ppm CO2です。従って、C3植物では50〜100 ppm以下のCO2濃度では呼吸による損失の方が光合成による固定量よりも大きく、光合成によって成長することができません。
C4植物はCO2を葉の細胞内で濃縮をする機構を備えているため、このようにC3植物に比べ低いCO2濃度の中でもCO2固定ができます。そのため、太陽光の下でC4植物は、ほぼ300 ppm CO2でCO2固定量は飽和し、現在の大気CO2濃度(380 ppm)がこれ以上増加しても、CO2固定量のこれ以上の増加は期待できません。一方、現在の地球上の植物種の大部分を占めるC3植物では、現在の大気CO2濃度でCO2固定量は飽和していないため、今後の大気CO2濃度の上昇によって、まだいくらか光合成CO2固定の増加が期待できます。しかし、これらは水が充分に与えられ、温度も適当な条件での結果であり、今後の地球の環境変動によって水ストレス、温度ストレスが増加すれば植物によるCO2固定が大きく影響を受けることは避けられません。
以上のようにC4植物では光合成CO2固定は現在の大気CO2濃度ですでに飽和していますので、たとえば、ビニールハウスの中のCO2濃度を増加させても光合成CO2固定を増加させることはできません。しかし、C3植物については、たとえば、メロンなど園芸作物で、ビニールハウスでCO2濃度を高め生産性向上を目的とする”CO2 肥料“が試みられています。
一方、大気中の酸素濃度はCO2濃度に比べ圧倒的に高く(20.8%)、さらに、光合成が進行している葉緑体でCO2固定とともに同じモル数の酸素が発生するため、自然環境では実際上、常に酸素が葉緑体の周りには存在しています。光合成と酸素濃度との関係は、光呼吸(光合成CO2固定が進行している間にみられる呼吸)が進行するC3植物では、酸素濃度が低下すると、ほぼ大気酸素濃度の低下に比例して光呼吸による損失が減少し、そのため、光合成CO2固定量が増加します。しかし、光呼吸は過剰の光エネルギーを(活性酸素を生じないように)安全に逃がすための一つの過程であるため、大気酸素濃度を低下させ光呼吸を進行できないようにすると、光阻害によって光合成が低下します。C4植物ではCO2濃縮機構によって光呼吸が抑えられているため、低い酸素濃度でもあまり影響はありません。もう一つの酸素が関係する過剰の光エネルギーを消去する安全な機構は、水―水サイクルとよばれる、葉緑体で生じた活性酸素を速やかに消去する反応で、これは、C3, C4植物共に、光呼吸よりもずっと低濃度の酸素、葉緑体で発生する酸素で充分な程度で進行します。いずれにしても、光合成が光阻害を受けないように進行できるためには酸素が必要です。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2009-05-07
浅田 浩二
回答日:2009-05-07