質問者:
一般
やよい
登録番号1903
登録日:2009-01-28
キャベツ畑で一部分の個体の葉が赤くなっていました。みんなのひろば
アントシアニンの出る理由
農家さんによると、「水はけが悪いところは、葉が赤くなる」ということでした。
葉が赤くなる、つまりアントシアニンが出てくる理由を調べたところ、
リン欠乏やマンガン過剰、亜鉛過剰、寒さ、病害などがあるようですが、
水はけが悪い場合というのはどれにあたる可能性が高いと考えられるでしょうか?
素人考えでは、水はけが悪い→根からの吸収ができない→りん欠乏?
なのかなと思うのですが・・・
やよい さま
水はけの悪い畑は、一般に地下水位が高く、そのため土壌の表面からの酸素の供給が充分でない状態になります。このため根が酸素の少ない地下水位より下には成長できず、また、土壌から無機養分を吸収するために必要な酸素呼吸が充分できないため、無機養分の吸収量が少なくなります。これに比べ、地下水位があまり高くならず、畑の土壌が適当に湿り、空気が入ることのできる土壌間隙の多い土壌では、根が土壌から無機養分を吸収するための呼吸に必要な酸素をいつも利用でき、根の成長もよくなって、土壌の広い範囲から無機養分を吸収することができます。
このように水はけの悪い畑では、植物の生育にとって絶対に必要な14種の無機養分元素を充分に吸収できなくなります。14種の元素の必要量は同じではありませんが、それでも他の元素で置き換えることはできないため、水はけの悪い畑では、無機養分の吸収量が一般に低くなり、そのため葉の光合成速度も低く、その作物の生育も抑えられます。
ご質問にありますように無機養分の欠乏、過剰、アンバランス、温度ストレス、病害などはすべて葉の光合成を抑制する環境要因となりアントシアニンの合成が促進されます。この他、光合成、特にCO2固定反応を低下させる多くの環境要因はすべて、アントシアニン合成を誘導、促進することが実験で示されています。これは現在次のように考えられています。光合成は太陽エネルギーを利用して合成される生化学エネルギー(ATP, NADPH)を生産する光化学反応(P)と、この生化学エネルギーを用いてCO2を固定する反応(A)に分けられます。P=Aであれば太陽光エネルギーがすべてCO2固定に利用されますが、環境要因によって(ここでは水はけが悪く、無機養分が吸収されにくくなると)Aが低下し、P>Aとなります。このようになるとCO2固定に利用できなくなった太陽光エネルギーの一部が活性酸素を生成するように働き、葉の光合成装置を破壊するようになります(光阻害)。この光阻害を防ぐため、主に葉の表皮細胞でアントシアニンが合成され、アントシアニンが太陽光のフィルターとして働き、葉緑体にあまり太陽光が届かないようにし、Pを低く保つようにしています。このように、環境ストレスによってA が低くなっても、アントシアニンによって太陽光を吸収し、P=Aになるようにして活性酸素が生じないようにし、光阻害が生じないようにしていると考えられます。
植物でのアントシアニン合成の役割については、この質問コーナーの質問登録番号1653, 登録番号1668, 登録番号1942に対する回答もご覧下さい。
水はけの悪い畑は、一般に地下水位が高く、そのため土壌の表面からの酸素の供給が充分でない状態になります。このため根が酸素の少ない地下水位より下には成長できず、また、土壌から無機養分を吸収するために必要な酸素呼吸が充分できないため、無機養分の吸収量が少なくなります。これに比べ、地下水位があまり高くならず、畑の土壌が適当に湿り、空気が入ることのできる土壌間隙の多い土壌では、根が土壌から無機養分を吸収するための呼吸に必要な酸素をいつも利用でき、根の成長もよくなって、土壌の広い範囲から無機養分を吸収することができます。
このように水はけの悪い畑では、植物の生育にとって絶対に必要な14種の無機養分元素を充分に吸収できなくなります。14種の元素の必要量は同じではありませんが、それでも他の元素で置き換えることはできないため、水はけの悪い畑では、無機養分の吸収量が一般に低くなり、そのため葉の光合成速度も低く、その作物の生育も抑えられます。
ご質問にありますように無機養分の欠乏、過剰、アンバランス、温度ストレス、病害などはすべて葉の光合成を抑制する環境要因となりアントシアニンの合成が促進されます。この他、光合成、特にCO2固定反応を低下させる多くの環境要因はすべて、アントシアニン合成を誘導、促進することが実験で示されています。これは現在次のように考えられています。光合成は太陽エネルギーを利用して合成される生化学エネルギー(ATP, NADPH)を生産する光化学反応(P)と、この生化学エネルギーを用いてCO2を固定する反応(A)に分けられます。P=Aであれば太陽光エネルギーがすべてCO2固定に利用されますが、環境要因によって(ここでは水はけが悪く、無機養分が吸収されにくくなると)Aが低下し、P>Aとなります。このようになるとCO2固定に利用できなくなった太陽光エネルギーの一部が活性酸素を生成するように働き、葉の光合成装置を破壊するようになります(光阻害)。この光阻害を防ぐため、主に葉の表皮細胞でアントシアニンが合成され、アントシアニンが太陽光のフィルターとして働き、葉緑体にあまり太陽光が届かないようにし、Pを低く保つようにしています。このように、環境ストレスによってA が低くなっても、アントシアニンによって太陽光を吸収し、P=Aになるようにして活性酸素が生じないようにし、光阻害が生じないようにしていると考えられます。
植物でのアントシアニン合成の役割については、この質問コーナーの質問登録番号1653, 登録番号1668, 登録番号1942に対する回答もご覧下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2009-04-27
浅田 浩二
回答日:2009-04-27