一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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常緑樹の落葉について

質問者:   大学生   みわ
登録番号1911   登録日:2009-02-14
はじめまして。常緑樹と落葉樹についてお聞きしたいことがあります。

紅葉のお話とリンクしているのですが、
色々な文献を読んでわかったことですが、落葉樹は葉が落葉するとき離層を形成して、そのため光合成によって生成した栄養分(デンプン)などが葉にたまり、それも分解され、クロロフィルも分解され、かわりにアントシアニン色素(クリサンテミン)が生成され、葉の色が紅くなってから落ちると自分なりに理解しました。

では、常緑樹もある時期になると落葉するはずですが、そのときのメカニズムとは離層を形成して落ちるだけなのでしょうか?
常緑樹も落葉するときは紅葉が起こるのでしょうか?
そもそも、常緑樹にはアントシアニンの色素が合成されないのでしょうか?

また、クリサンテミンの生成回路も色々調べていてもよくわからないので教えていただきたいです。出発物はアミノ酸由来のフェニルアラニンから合成されたアントシアニジンであるということはなんとなくわかったのですが、反応経路がよくわからないので。

質問が多いですが、よろしくお願いします。
みわ さま

アントシアニンはC6-C3-C6を骨格とするフラボノイドに属する色素分子で、植物に多彩な色彩を与えています。この骨格に結合している糖の種類、-OHの数、位置などによってこれまで500種類以上のアントシアニンが植物に見いだされています。これらの生合成経路についてはフラボノイド、アントシアニンのところに記されています[例えば、本質問コーナーの質問登録番号1099への回答、桜井ら:植物生理学概論、pp.148-154 (2008), 培風館、を参照]。

冬の間も低いながら光合成を続けてきた常緑樹の古い葉は、新緑の新しい芽が出る頃、一斉に落葉します。恐らくこの場合も落葉樹と同様、葉柄に離層ができ、落葉した後にコルク層で覆われると思われます。このとき、一般に落葉樹のように紅葉することはありません。しかし、落葉樹でも、また、常緑樹でも、春に葉の新芽が出るときアントシアニンによって赤くなるウバメガシ、アカメガシワのような種もあります。このような赤い新芽も、葉が成長するにつれて緑色となり、活発に光合成をするようになります。

このように落葉樹、常緑樹ともに、さらに一年生の草本植物でもアントシアニンを合成する能力は全ての植物がもっています。一般に葉のアントシアニンは、植物がいろいろな環境ストレスを受けた時、その合成が誘導されることが明らかにされています。強すぎる照度の光、紫外線、無機養分の欠乏、温度ストレスなどに植物がさらされると、アントシアニンが合成され、赤色になるのはよく見られます。この様な実験結果から、秋の紅葉について、アントシアニンによって太陽光を吸収し、弱ってきた葉緑体にあまり光が当たらないようにし、葉緑体の光合成機能をできるだけ長く保たせる役割が提案されています(本質問コーナー質問登録番号0388に対する回答)。一方、春の新芽の紅葉については、春に強くなる紫外線をアントシアニンが吸収し、葉緑体を守っているのではないかと、考えられています。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2009-05-07
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