一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ひまわりの果実

質問者:   会社員   パシリアーノ哲
登録番号1924   登録日:2009-02-24
貴HPに寄せられる疑問とその回答を集めただけでも植物の百科事典になりそうで、時間が空けばついつい見入ってしまいます。
植物に素人の私として、初歩的な疑問がありますが、被子植物は果実を作るとありますが、ひまわりやどんぐりは種子が丸出しのように見えます。
一体、このような種類の果実はどの部分を指すのでしょうか。
教えてください。
パシリアーノ哲様


質問コーナーへようこそ。ご来場を歓迎します。

さて、以下のご質問ですが、これは一般的にあるいは農業上にいわれる「種子(たね)」と植物学上の種子との違いによるものです。植物学的には種子の定義は「受精後胚珠が発達してできる構造体」とでもいうことができます。このことを説明するために、まず受精から種子ができるまでを簡単にのべます。

被子植物の簡単な花を例にとって説明します。
花は外側から、がく、花弁、おしべ、めしべでできています。果実/種子ができるのはめしべです。めしべの下部には子房という部分があり、めしべの先端(柱頭)で受粉が行われると、花粉から花粉管がのびて、花柱を通り子房に到達します。子房の中には胚珠があり、その中に胚のうできて、その中に卵細胞があります。花粉管が胚珠に入り口(珠孔)にたっすると、花粉管のの中にできた精細胞が胚珠のなかに放出され受精がおこなわれます。これらの過程については高等学校の生物の教科書ででも学んでください。
また、質問コーナーの過去の回答も参照してください(登録番号0496, 登録番号0872, 登録番号1679, 登録番号1791)。 


受精卵は分裂して胚を形成し、胚を周囲の組織が取り囲んで種子ができあがります。問題はこの取り囲む周囲の組織が植物の種類によって様々あるのです。一般の方は種子というと、所謂「くだもの」のなかにある「たね」のことを思い浮かべます。しかし、モモ、アンズ、ウメ、サクランボなどのいわゆる種子は外側の固い部分は植物学的には内果皮に相当し、中の薄い皮が種皮ですから、植物学的に定義される正しい種子は固い殻を除いた内側の部分ということになります。また、シソ、ブナ、タデ、ニンジン、キク、クリ、ケヤキ、トウモロコシなどなどは果実全体を種子と呼んでいます。

これらの種子では果肉がなく果皮が見かけ上の種皮となっています。これに対してハコベ、ケシ、ダイコン、ワタ、パンジー、ゴマ、スイカ、キュウリ、カキ、エンドウ、アサガオ、ナス、ダイズなどのいわゆる種子は真の種子です。

したがって、ご質問のドングリやヒマワリの種子は果実全体を種子とよんでいるものです。なお、果実とは必ずしも「くだもの」とよばれるものだけではありません。一般的には、というよりは、狭義では「果実とは子房が発達してできた構造体(器官)」ですが、イチゴなどように花托が発達してできた「くだもの」もありますので、広義には「果実とは花の部分が発達してできた構造体」でもあります。子房の壁は果実では果皮となります。私たちが食する果実は果皮が柔らかく多肉でジューシーですので、こういうタイプの果実を液果とよんでいます。果皮が固く乾燥してしまったものは乾果といいます。ヒマワリやドングリは乾果です。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見允行
回答日:2012-08-25
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