一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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萌芽更新について

質問者:   会社員   マル哲
登録番号1931   登録日:2009-03-01
毎回毎回、分かりやすいご回答をいただきありがとうございます。
今回、萌芽更新についてお聞きしたいのですが、コナラなど雑木林を見ますと過去に伐採された形跡のある、根元付近がこぶのように膨れた木を見ることができます。伐採して数年後の木は、特にサクラなどみますと「ひこばえ」のような枝が切り口周辺からまるで雑草のようにのびています。
植物細胞は「全能性」があり、どのような器官ににもなりうる能力を持っていると聞きました。そこで疑問ですが、なぜ切り口そのものから枝が発生しないのですか?側芽から枝を伸張させたほうがはるかに効率が良いということでしょうか?
また、萌芽更新をした樹木をみると、かつての幹の真上の位置に伸張して、横枝を伐採した樹木が切り口を残したまま生長しているような、そんな切り口の痕跡が見られません。それは、伸張した側芽が切り口の真上に徐々に移動したからでしょうか。
ぜひ、教えてください。
マル哲さま

みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。質問が沢山ありますので、一つづつお答えします。まず、植物細胞の「分化全能性」についてですが、これを持っているのはは生きている細胞だけです。樹木の中心の材の部分の細胞は死んだ細胞ですので、「全能性」は持っておらず、従って、切り株の中心部分からは芽が出て来ないのです。枝は葉の付け根からでます。切り株の周辺部分から雑草のように伸びている芽(不定芽)は切り株として残された部分が若かった頃、葉を付けていた所から伸びてきたものです。次に、切り株の周辺部分に生えて来た枝が中心部に移ることはありません。真上を向いて伸びている部分はもともとそこにあったもので、切り株から再生してきたものではないのです。樹木の根元近くにあるのコブは、土壌細菌の感染により出来た腫瘍(クラウンゴール)で、伐採したあと、切り口に出来たものではありません。大阪に「造幣局のサクラの通り抜け」というお花見の名所がありますが、ここのサクラにもクラウンゴールができています。これが出来るとサクラが弱るので、除去したいのですが、除去できないようです。
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2009-03-10