植物Q&A

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茎の成長について

質問者:   高校生   まりも
登録番号1937   登録日:2009-03-09
学校の授業での質問なんですが・・・
植物は重力に逆らって成長すると先生に聞いたのですが、ある植物を横にして回転させながら成長させるとどの方向に向かって成長するのですか?

また、横にしながら下から光を当てると、どの方向に向かって成長しますか?

なるべく早く返答をしてください。
まりもさん

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。下記の質問に対して、関連した実験をなさったことがある方に回答をお願いしてありますが、ご希望のように”早く”お答えできるかどうか分かりません。回答は待っていただくこともあるのが原則ですが、とりあえず、私が答えられる範囲で回答しておきます。

回答:植物の成長方向は茎、葉、根、花など、どの器官も原則的に重力と光の影響を受けます。重力は地球上であるならば、g=1でどこでも、いつで、同じ条件ですが、光は、光量、波長、照射時間などによってさまざまな条件の異なりがあります。高校の教科書には必ず書いてあるはずですが、茎は重力に逆らって成長し(負の重力屈性)、根は重力の方向に成長(正の重力屈性)します。したがって、「植物は重力に逆らって成長する。」と表現するのは不正確です。
植物を水平に置くと、茎は負の重力屈性を示して上向きに曲がって成長を始めますが、クリノスタットという装置に置いて、水平のまま水平軸の回転を与えてやると、重力屈性は失われて、植物はそのまま水平に成長します。もちろん回転の速度や植物の種類によっても異なりますが、ヒヨスという植物を使った実験では10分間に一回転の速度で重力屈性が失われます。
植物(茎)は光に対しては正の屈曲を示します。すなわち、光の方向へ伸びていきます。ただし、この反応を引き起こす光は青色光です。光の強さ、反応が現れれる時間など複雑な要因がありますが、ここでは説明は省きます。大雑把にいえば、光と重力は茎の成長方向に対して、お互いに逆の影響をし合うということです。
しかし、光の刺激を受け取るメカニズムと重力の刺激を受け取るメカニズムは別であるから、両者がただ単に逆に働いているとはいえません。見かけ上はそうですが。
さて、重力刺激を与えると同時に光刺激を与えた場合は、植物はどのように反応するでしょうか。今から約30年ほど前に、クレス(セイヨウカラシナ)を使って行った実験が報告されています。緑化したクレスの芽生えを垂直と水平(左向き)とに置きました。そして、左側から側光(適切な光量の青色光)を連続的に照射してやると、垂直に置いた方は光の方へ曲がり始めました。他方、水平に置いた方は立ち上がり始めて40分後にはまっすぐ上を向きましたが、その後、光の方へ曲がり始めました。この結果から、光と重力の刺激の受容は別々のメカニズムで起きているらしいこと、重力への反応の方が光への反応よりも早く起きると考えられました。しかし、重力と光の相互関係はもっと複雑なようです。残念ながら、下から光をあてた実験については分かりません。しかし、想像すれば、はじめに負の重力屈性によって芽生えは上向きに曲
がり始めるでしょう。しかし、真下から光を当てると芽生えは光の方向の感知に戸惑ってしまうのではないでしょうかね。芽生えが光を感知するのは茎の先端、つまり茎頂ですから。


まりもさん

下記の質問について先日一応回答をおくりましたが、もっと詳しい解説を大阪市立大学大学院の保尊隆享教授にしていただきましたのでおくります。


植物を横にして回転させながら成長させる、とは、おもしろいことを考えましたね。大昔の科学者も同じ方法を思いついており、生物試料を回転させる装置は100年以上も前から使われています。この装置をクリノスタットと呼びます。なお、回転が速すぎると遠心力の影響が大きくなるので、ふつう1分間1回転程度で実験します。

さて、クリノスタットの上で植物を育てると、茎はどの向きに成長するのでしょうか。実は、まっすぐに伸びるものはほとんどありません。多くの若い茎は、種子に巻きつく方向か、逆に種子から逃げる向きに曲がりながら成長します。これを、自発的屈曲あるいは自発的形態形成と呼びます。その原因は、茎の構造にあります。茎を輪切りにしてみればわかりますが、茎はもともと同心円状ではなく、背側(種子から遠い側)と腹側との間に構造的な違いがあります。両者の成長能力の違いによって、どちらかの向きに曲がりながら成長するわけです。このような背腹性は、植物が成長するとともに弱くなり、やがて茎は様々な方向に成長するようになります。また、種や器官によっては、初めから様々な向きに伸びるものもあります。

クリノスタット以外に、重力の影響をなくす方法として、宇宙実験があります。1998年に私たちが行ったスペースシャトルSTS-95での実験では、イネ幼葉鞘は種に巻きつくように屈曲し、一方、シロイヌナズナ胚軸は様々な方向に成長しました(全体の約20%は寒天培地の中に入り込みました)。

もう1点ですが、これは、重力屈性と光屈性の相互作用に関するご質問だと思います。一般に、両者を比べると、茎では光屈性の影響が強く、根では重力屈性の力が優先すると言われています。ただし、実際には、実験条件によって結果はかなり変わってきます。もし、茎を横にするのと同時に光を下から照射すると、重力屈性の方が早く効果が現れるので、まず茎は上方に向かって曲がり始めます。やがて、光屈性の影響が出始め、ある角度で屈曲が止まります。どの角度まで曲がるかは、光の強さ、あるいは茎の種類や生育状態に依存します。これに関連して、1つ大事なことがあります。それは、地球上では重力の大きさや向きが一定であるのに対して、光の強さや向きは始終変わっているということです。そのため、最適な条件下では、重力より光が茎の成長方向に強く影響するものの、私たちが暮らしている環境では光の効果は平均化されてしまい、茎は基本的に重力方向(上下方向)に沿って成長することになります。

保尊 隆享(大阪市立大学大学院)
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2009-03-19
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