質問者:
高校生
biospore
登録番号1943
登録日:2009-03-15
ある生物学関連の本を読んでいて、みんなのひろば
植物の離島への移入による進化
「離島に移入した草本の祖先植物は一般に木本植物に進化する傾向にある」
という記述を見かけたのですが、例としてハワイ諸島の木本のロベリアと木本のスミレが挙げられていただけで、理由は書かれていませんでした。
その理由とは何でしょうか?
また、質問する前に自分なりに理由を考えてみました。以下の理由は妥当でしょうか?
1.離島は小面積であることが多いので、海流等の影響を受けやすく、従って気候変動が激しい。そのため、より強い(気候変動への耐えられる)木本植物に進化した。
2.離島は大陸に比べ他の植物との競争があまり激しくない。そこで頻繁な世代交代の必要性があまり無く、多年生で環境の変動にも強い木本植物に進化した。
biospore さん:
お待たせしました。みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
離島などでの植物系統進化分類をご専門としている東京都立大学名誉教授の小野幹雄先生に伺い、次のような解説を頂きました。植物は進化の過程で、木本から草本を出したり、草本から木本を出したりすることを繰り返しています。そのような変化は、生育環境、他生物種との競合などによって少しずつ定着していったものです。離島という特殊な環境であればそれなりの固有の進化過程をたどった例は沢山あります。
【小野幹雄先生の解説】
離島などに進入した草本植物が木本植物に進化するという話は一般的なこととは思えません。何か誤解があるかとも思います。多分こういうことかと思います。
裸地である離島に新しく入ってくる植物には草本も木本もあるでしょう。それらが定着すれば当然、草地なり森林などになるでしょうが、この”進入”は全く偶然のチャンスに偶然の方法で起こることなので、草本だけが到着して新しい植生を作っていくこともあります。この場合まれには、草地を作った植物種の子孫の中にあたかも樹木のような形状をもった〔つまり木本状の)個体群が生じてくることもあり得ます。正確に言えば突然変異などで生じた木本状の個体が生き残って繁殖し、他の個体より生存に有利だったためそのような個体群とその子孫がだんだん増えて行ったということもあるでしょう。
どんな植物でもこうなるわけではありませんが、キク科、サボテン科、キキョウ科の種類にはそのような例が見られます。離島でいえば、ファンヘウナンデス諸島のロビンソニア属(キク科)、ガラパゴス諸島のスカレシア属〔キク科〕、小笠原諸島のワダンノキ属〔Dendrocacalia,キク科〕ガラパゴス諸島のOpuntia やCeleus属〔いずれもサボテン科〕、小笠原のオオハマギキョウ〔キキョウ科)などがあり、ハワイにはスミレ科で木になる種類もあります。離島でなくともアフリカ・キリマンジャロの熔岩原には木になるキク科のDendrosenecio も知られています。この熔岩原は隔離されていて、他の植物がなかなか入れないという点では離島と同様な状況です。
要するに、隔離されて多くの植物が進入しにくい状況では、木のない草地を作った植物の中で、キク科などの一部に木本化する種類が現れ、その子孫が樹木化した種類として残存し繁殖する例がしばしば見られると言うことです。それほど一般的なことではありませんが、たいへん目立つ現象なので注目されてきたわけです。
小野幹雄(東京都立大学名誉教授)
お待たせしました。みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
離島などでの植物系統進化分類をご専門としている東京都立大学名誉教授の小野幹雄先生に伺い、次のような解説を頂きました。植物は進化の過程で、木本から草本を出したり、草本から木本を出したりすることを繰り返しています。そのような変化は、生育環境、他生物種との競合などによって少しずつ定着していったものです。離島という特殊な環境であればそれなりの固有の進化過程をたどった例は沢山あります。
【小野幹雄先生の解説】
離島などに進入した草本植物が木本植物に進化するという話は一般的なこととは思えません。何か誤解があるかとも思います。多分こういうことかと思います。
裸地である離島に新しく入ってくる植物には草本も木本もあるでしょう。それらが定着すれば当然、草地なり森林などになるでしょうが、この”進入”は全く偶然のチャンスに偶然の方法で起こることなので、草本だけが到着して新しい植生を作っていくこともあります。この場合まれには、草地を作った植物種の子孫の中にあたかも樹木のような形状をもった〔つまり木本状の)個体群が生じてくることもあり得ます。正確に言えば突然変異などで生じた木本状の個体が生き残って繁殖し、他の個体より生存に有利だったためそのような個体群とその子孫がだんだん増えて行ったということもあるでしょう。
どんな植物でもこうなるわけではありませんが、キク科、サボテン科、キキョウ科の種類にはそのような例が見られます。離島でいえば、ファンヘウナンデス諸島のロビンソニア属(キク科)、ガラパゴス諸島のスカレシア属〔キク科〕、小笠原諸島のワダンノキ属〔Dendrocacalia,キク科〕ガラパゴス諸島のOpuntia やCeleus属〔いずれもサボテン科〕、小笠原のオオハマギキョウ〔キキョウ科)などがあり、ハワイにはスミレ科で木になる種類もあります。離島でなくともアフリカ・キリマンジャロの熔岩原には木になるキク科のDendrosenecio も知られています。この熔岩原は隔離されていて、他の植物がなかなか入れないという点では離島と同様な状況です。
要するに、隔離されて多くの植物が進入しにくい状況では、木のない草地を作った植物の中で、キク科などの一部に木本化する種類が現れ、その子孫が樹木化した種類として残存し繁殖する例がしばしば見られると言うことです。それほど一般的なことではありませんが、たいへん目立つ現象なので注目されてきたわけです。
小野幹雄(東京都立大学名誉教授)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2009-03-31
今関 英雅
回答日:2009-03-31