一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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木から育って紙になり土に戻るまでの総寿命は何年くらいですか

質問者:   大学生   涼
登録番号1953   登録日:2009-04-09
大学の美術部の学生です。
本というテーマで作品を作ることになり構想を考えていたところ、紙に加工される木が 種→発芽→生長→伐採→製紙→紙の劣化(腐敗)→土 になるまでには一体何年くらいかかるのだろうと思いました。
それとも、そもそも紙に加工されたものは劣化こそすれ土には戻らないのでしょうか。植物だったものが土に戻るにはどんな条件があるのでしょうか。

紙の原料となる木は広葉樹、加工された紙は印刷用紙という場合で回答をお願いします。
涼 様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。ところで以下のご質問ですが、質問の発想が大変面白いと思います。しかし、答えは出ないというよりほかありません。しかし、質問の条件(広葉樹、印刷用紙)に限定して、考えてみましょう。まず、パルプチップの材料に天然木を使うか、栽培した木を使うかですが、現在では天然木の伐採による環境破壊が問題になって、各製紙会社は栽培 植物(樹木以外のもの含めて)を使うようになっています。そこで、紙の原料となる樹木を栽培でまかなうとしますと、大体10年サイクルで育てているようです。したがって、チップができるまでに10年かかります。天然木だと50年前 後ではないでしょうか。この後は製紙工場で実際に紙に加工されるまでの時間ですが、チップ→パルプへの加工→製紙までの時間は貯蔵などの期間を含めても1年前後でしょう。さてその後が問題です。印刷用紙でも、新聞や雑誌、包み紙、FAX、Printerなどに使われるものは、最終処分されるまでの時間は使用者によってどうにでもなります。永久保存したいと思えば、そのようにすることもできますが、大体は消耗品扱いですから、紙としての命は短命でしょう。書籍などでも短命のものから長命のものまで、保存の仕方によってまちまちです。洋紙は製紙過程の残留物である硫酸のため、100年も経つと劣化が始まるようですが、現在は中性紙などいろいろ工夫がなされています。ただし腐敗するものではありません。腐敗はバクテリアのよって引き起こされるものですから、自然にそう成るものではありません。要するに、紙はどのように保管するかで、いかようにも寿命を延ばすことができます。高い湿度•温度に置いたり、空気に曝したり、光に当てたりすると紙は劣化しやすくなります。化学反応の進行によるものです。また、土に帰るには土に埋めるか、森林の中に放置すれば、土壌バクテリアなどの働きで完全に分解されてしまうでしょう。その時間は温度、水分などさまざまな条件によってことなります。このような分解は紙でなくてもすべてに物およびから加工されたものにあてはまります。 もし、数値の回答を望まれるというなら、パルプなるまでの時間を一応10年±1年として、あとは人間の扱い次第ということでしょうか。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2009-04-13
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