質問者:
その他
ぽにょ
登録番号1958
登録日:2009-04-19
小胞輸送について質問です。みんなのひろば
植物の小胞輸送について
動物細胞では、小胞体からゴルジ体への小胞輸送は、中心体から放射状に伸びている微小管の上をキネシンが小胞を持って移動することで運ばれるそうですが、
① 微小管は中心体から小胞体を経由して、そこで小胞を受け取り、ゴルジ体へ運ばれるのでしょうか?
② キネシンはどのようにして小胞を認識して受け取るのですか?
③ 植物細胞に中心体はありませんが、この場合どのようにして小胞は運ばれるのでしょうか?
④ 微小管で運ばれるならば、オルガネラ同士が微小管で連結されているのでしょうか?
以上よろしくお願い致します。
ぽにょ 様
表記質問に対して兵庫県立大学大学院生命理学研究科の新免輝男教授に回答をいただきましたので送ります。最近の研究に関わることなので専門的な内容ですが、ご理解いただけると思います。なお末尾に挙げてある参考文献は学術誌なので、ふつうの図書館にはおいてないでしょう。しかし、internet で見ることができます。ご存知かもしれませんが、例えば、http://scholar.google.co.jp/などで。
[回答]
植物細胞における原形質流動の分子機構
> いくつかの植物において、キネシンまたはキネシン様タンパク質が存在することが生化学、遺伝学的な解析によって明らかになっております。しかし、小胞輸送への関与は分かっておりません。
> 多くの植物細胞において原形質流動が見られます.原形質流動はアクチンフィラメントの阻害剤によって阻害されることから、アクチン・ミオシン系の関与が示唆されていました。テッポウユリ花粉管、タバコ培養細胞、車軸藻類などを用いた生化学的な解析によって、原形質流動にはミオシンXIが関与していることが明らかになりました。分子量17万程度の重鎖がダイマーを形成しております。分子構造としては二つの頭部と尾を持ちます。頭部はN端に相当し、ATPを加水分解してアクチンフィラメントの上を滑る機能を持ちます.C端にあたる尾で細胞小器官に結合すると考えられております。このように細胞小器官に結合したミオシンXIがアクチンフィラメントの上を滑ることにより、原形質流動が起こります(文献 1, 2)。
> 植物は複数のミオシンXIを持っており、輸送する細胞小器官を分担していると考えられています。事実、シロイヌナズナではMYA2と呼ばれるミオシンXIがペルオキシソームの輸送を行うことが分かっております(文献 3)。タバコでは分子量17万5千の重鎖からなるミオシンXIが小胞体を輸送することが分かっております (文献 4)。
> 花粉管における原形質流動はアクチン・ミオシンXIによりおこり、細胞小器官は毎秒7マイクロメーター程度の速度で動きます。アクチンフィラメントを破壊すると、花粉管の成長が停止します。一方、花粉管にはゴルジ体やミトコンドリアを輸送するキネシンが存在しますが、その速度は毎秒0.1 - 0.2 マイクロメーター程度です。キネシンによる輸送の役割は分かっていません(文献 5)。微小管を破壊しても、花粉管の成長は阻害されません。
> 一部の藻類では微小管系が原形質流動の主たる役割を担っている可能性を示す実験結果が報告されていますが、解析不十分な状態です。
文献
1)Shimmen, T. and Yokota, E. (2004) Cytoplasmic streaming in plants. Current Opinion Cell Biology 16: 68-72
2)Shimmen, T. (2007) The sliding theory of cytoplasmic streaming: fifty years of progress. J. Plant Res. 120: 31-43
3)Hashimoto, K., Igarashi, H., Mano, S., Nishimura, M., Shimmen, T. and Yokota, E. (2005) Peroxisomal localization of a myosin XI isoform in Arabidopsis thaliana.
Plant Cell Physiol. 46: 782-789
4)Yokota, E., Ueda, S., Tamura, K., Orii, H., Uchi, S., Sonobe, S., Hara-Nishimura, I. and Shimmen,T. (2009) An isoform of myosin XI is responsible for the translocation of endoplasmic reticulum in tobacco cultured BY-2 cells. J. Exp. Bot. 60: 197-212
5)Romagnoli, S., Cai, G., Faleri, C., Yokota, E., Shimmen, T. and Cresti. M. (2007) Microtubule- and actin filament-dependent motors are distributed on pollen tube mitochondria and contribute differently to the their movement. Plant Cell Physiol. 48:345-361
兵庫県立大学大学院生命理学研究科
新免輝男
表記質問に対して兵庫県立大学大学院生命理学研究科の新免輝男教授に回答をいただきましたので送ります。最近の研究に関わることなので専門的な内容ですが、ご理解いただけると思います。なお末尾に挙げてある参考文献は学術誌なので、ふつうの図書館にはおいてないでしょう。しかし、internet で見ることができます。ご存知かもしれませんが、例えば、http://scholar.google.co.jp/などで。
[回答]
植物細胞における原形質流動の分子機構
> いくつかの植物において、キネシンまたはキネシン様タンパク質が存在することが生化学、遺伝学的な解析によって明らかになっております。しかし、小胞輸送への関与は分かっておりません。
> 多くの植物細胞において原形質流動が見られます.原形質流動はアクチンフィラメントの阻害剤によって阻害されることから、アクチン・ミオシン系の関与が示唆されていました。テッポウユリ花粉管、タバコ培養細胞、車軸藻類などを用いた生化学的な解析によって、原形質流動にはミオシンXIが関与していることが明らかになりました。分子量17万程度の重鎖がダイマーを形成しております。分子構造としては二つの頭部と尾を持ちます。頭部はN端に相当し、ATPを加水分解してアクチンフィラメントの上を滑る機能を持ちます.C端にあたる尾で細胞小器官に結合すると考えられております。このように細胞小器官に結合したミオシンXIがアクチンフィラメントの上を滑ることにより、原形質流動が起こります(文献 1, 2)。
> 植物は複数のミオシンXIを持っており、輸送する細胞小器官を分担していると考えられています。事実、シロイヌナズナではMYA2と呼ばれるミオシンXIがペルオキシソームの輸送を行うことが分かっております(文献 3)。タバコでは分子量17万5千の重鎖からなるミオシンXIが小胞体を輸送することが分かっております (文献 4)。
> 花粉管における原形質流動はアクチン・ミオシンXIによりおこり、細胞小器官は毎秒7マイクロメーター程度の速度で動きます。アクチンフィラメントを破壊すると、花粉管の成長が停止します。一方、花粉管にはゴルジ体やミトコンドリアを輸送するキネシンが存在しますが、その速度は毎秒0.1 - 0.2 マイクロメーター程度です。キネシンによる輸送の役割は分かっていません(文献 5)。微小管を破壊しても、花粉管の成長は阻害されません。
> 一部の藻類では微小管系が原形質流動の主たる役割を担っている可能性を示す実験結果が報告されていますが、解析不十分な状態です。
文献
1)Shimmen, T. and Yokota, E. (2004) Cytoplasmic streaming in plants. Current Opinion Cell Biology 16: 68-72
2)Shimmen, T. (2007) The sliding theory of cytoplasmic streaming: fifty years of progress. J. Plant Res. 120: 31-43
3)Hashimoto, K., Igarashi, H., Mano, S., Nishimura, M., Shimmen, T. and Yokota, E. (2005) Peroxisomal localization of a myosin XI isoform in Arabidopsis thaliana.
Plant Cell Physiol. 46: 782-789
4)Yokota, E., Ueda, S., Tamura, K., Orii, H., Uchi, S., Sonobe, S., Hara-Nishimura, I. and Shimmen,T. (2009) An isoform of myosin XI is responsible for the translocation of endoplasmic reticulum in tobacco cultured BY-2 cells. J. Exp. Bot. 60: 197-212
5)Romagnoli, S., Cai, G., Faleri, C., Yokota, E., Shimmen, T. and Cresti. M. (2007) Microtubule- and actin filament-dependent motors are distributed on pollen tube mitochondria and contribute differently to the their movement. Plant Cell Physiol. 48:345-361
兵庫県立大学大学院生命理学研究科
新免輝男
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2009-04-24
勝見 允行
回答日:2009-04-24