一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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キクザキイチゲ(イチリイソウ)の花の色の違いについて

質問者:   一般   ノリコ
登録番号1960   登録日:2009-04-24
家庭の主婦です。野の花の観察をしながら近所を散歩をしています。家の近くにキクザキイチゲ(イチリンソウ)がたくさん咲いている場所があるのですが、同じ場所なのに、花の色が白いものと青紫色のものとがあります。初めは咲いている場所の土の違いかとも思いましたが、白と紫の花が隣りあって咲いています。これは、どのような理由によるものなのでしょうか。同じ種類の花が、このように色を違えることには、花にとって何か理由や目的のようなものがるのでしょうか。色変化の化学的な理由と、同じ花がどうして個別に色を変えているのか、その生態について教えていただければ幸甚に存じます。
ノリコさま

みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。ご質問にお答えする前に、まず、キクザキイチゲとイチリンソウは違う植物だと云うことを申し上げなくてはなりません。キクザキイチゲの花(花びらのように見えるのは蕚へんですが)の色は白、ピンク、青紫色、淡紫色と変化が多いですが、イチリンソウの花の色はおおむね白です。
この仲間のユキワリソウとも呼ばれているミスミソウの花も白、ピンク、淡紫色と変化に富んでいます。花に色があるのは色のある物質(色素といいます)を含んでいるからです。色素は無色の物質から酵素の働きで作られますが、色素を作る酵素がないか、酵素の働きが弱いと色素は作られず、花は白くなります。青い色の色素はピンクの色素になる手前の物質から作られますが、これをするのも酵素で、この酵素がないと花はピンクになり、この酵素の働きが弱いと、ピンクと青の混ざった紫になります。
キクザキイチゲでは青い色素を作るための酵素全部が働いている株や、一部の酵素だけしか働いていない株や、どの酵素も働いていない株があるので、花の色に変化が生じるのです。酵素が働いているかいないかは、その酵素を作るための遺伝子があるかないかにもよりますが、遺伝子が有るのに、酵素が作られなかったり、作られた酵素が働かなかったりする場合もあります。イチリンソウの花ですが、上から見ると白色ですが、裏側から見るとピンクです。同じ一本の植物では、どの細胞も同じ遺伝子を持っていますので、イチリンソウの花びら(ここでも蕚へん)の上側の白い細胞も、ピンク色の色素を作る下側の細胞と同じように、ピンク色の色素を作るために必要な酵素を作るための遺伝子は持っているのですが、酵素が作られないか、作られてもちゃんと働かないので、色が着かないのです。登録番号1905 に、ユキノシタの葉の色の株による違い、登録番号1204 にダイコンの花の色の栽培条件による違いについての質問とそれに対する回答が載っています。参考になると思います。同じ種類の植物で、違った色の花をつける目的は分かりません。
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2009-05-07
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