一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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花・実のピークは3〜4年?

質問者:   会社員   ミンティア
登録番号1965   登録日:2009-04-30
剪定の勉強をしてるときに疑問に思ったんですが
「花数・結実及び果実の品質は3〜4年の枝がピーク。」
「低木の花木・果樹は主軸枝。大きい花木・果樹は主枝が当てはまる」
っと、どの本もこのようなコトが書かれております。
実際そうなんで納得は出来るんですが
「古い枝」だからという理屈だけでは
理由として満足がいきません。
「すごく古い枝」ならまだしも、たった3〜4年というところが
特にひっかかります。

「養分・水分は、枝が分岐をすればするほどスムーズではなくなる」と
別の本に書いてあったんで、今は勝手にコレが理由なのかとも思ってますが…。

「3〜4年がピーク」というのは具体的に、どういうことで花数・結実及び果実の品質が劣ってくるんでしょうか?

よろしくお取り計らい願いますm(_ _)m
ミンティアさま

みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。頂いたご質問は植物生理学会の会員には手に負えない質問だったので、会員以外の方でお答え頂ける方を探しており、お答えが遅くなってしまいました。以下は東京大学の寺島一郎先生、種子田春彦先生のお骨折りにより、ようやく探し当てた、農業・食品産業技術総合研究機構・果樹研究所の草場新之助先生のご回答です。お役に立つと思います。


(1)同化産物の面から
果樹における果実への同化産物の集積は、その果実に近い位置に着生している葉における同化産物が主に転流します。果樹における葉の着生数は、1年生の枝が最も多く、ついで2年生の枝、4年生の枝になると着葉数は非常に少なくなります。良い果実をとるためには葉が多く着生している枝に着果させた方が果実肥大、糖集積の面でも好ましいです。

(2)枝の機能の面から
(1)から、年数がたった枝は物質生産をするよりも樹体を支持する機能のウエイトが大きくなります。古い枝を残していると「果実ではなく、材木を作っている」と言われることがあるのもこのためです。果樹の主幹、主枝は骨格ですので樹体を支持する機能でよいのですが、果実をとるための側枝は新しい枝に更新する必要があります。

(3)花芽の着生の面から
花芽の着生の仕方は樹種によって様々ですが、一般的に年数がたった枝には花芽は着生しにくくなります。果実をとるためには花芽が必要ですので、果実生産させる枝は剪定等により必然的に更新せざるを得ません。

「10年生の枝にも、そのずっと先には1年生の枝があり実がなるではないか」と言われるかもしれませんが、そうするとどんどん樹が大きくなってしまいます。通常は、1樹の占め得る空間は限られており、高所作業を避けるためにも樹を一定の容積に収める必要があります。そのためには(2)における樹体を支持する機能の枝と、物質生産をする枝とをきっちり区別して扱う必要がありますので、物質生産をする枝は質問にありますように3〜4年がピーク(もっと早く更新をする果樹もありますが)で、その後は剪定等により古い枝を取り除き、新しい枝に更新をする必要があるということです。

草場 新之助(農業・食品産業技術総合研究機構・果樹研究所)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2009-05-12
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