質問者:
会社員
こん
登録番号1974
登録日:2009-05-13
キャビテーションの修復に関してなのですが、水の間に存在するのは空気なのですか?みんなのひろば
キャビテーションの修復について
植物の知恵という本に根圧でキャビテーションが修復できるとありました。
キャビテーションが修復されるのは夜なのですか?
昼なのですか?
キャビテーションの中の空気?みたいなのは茎のどこから来てどこえ逃げていくのですか?
説明お願いします。
こん さま
根から吸収された水が大木の先端まで道管を通って移動する機能は植物が成長、生存するために絶対に必要ですが、これについては本質問コーナーでたびたび触れられています(質問登録番号0656, 登録番号1457, 登録番号1918への回答)。今回は道管を経て水が移動する際、道管に泡が生じると(キャビテーション)水の移動が妨げられますが、それを植物がどうして防いでいるかのご質問です。動物の血管に泡ができると血流が妨げられ、致命的障害を与える塞栓(そくせん)症状を、どうして植物が防いでいるかを考えてみたいと思います。
昼間、葉の気孔が開き、蒸散作用で水が気体となって大気中に飛散しているとき、道管の中では水が葉に引っ張り上げられた状態になります。この時、道管の中の水には(重力に逆らって)引っ張り上げるために相当に負圧がかかっています(100 mの高さの樹木であれば − 3 MPa)。この導管内の負圧は比較的簡単な装置で測定できますが、この低い圧力の下で、水に溶けていた気体(もともと土壌水分に溶けていた大気成分;酸素、窒素、二酸化炭素)や水そのものが、気体になりやすくなります。さらに、恒温動物と異なり植物の幹,茎の道管の温度は気温によって変動しますが、昼間に温度が上昇すれば気体(泡)が生じやすくなります。このように昼間の低圧、温度上昇によって泡ができやすくなりますが、この泡が道管(直径は0.6 mm以下)で発生し、道管の直径より大きくなって、水柱が泡で断ち切られる事態なれば、水の移動が進行できなくなります。これを防ぐため植物は、道管で小さな泡が発生すれば、別の道管に水が連なるようにし、水柱が全体として泡で立ち切られないようにしています。
道管、(仮道管)の構造の詳細は植物生理学の教科書を見ていただくとして、道管は根から葉まで続いて一本のパイプとして独立しているわけではありません。道管は数本が並んでいて、相互に壁孔などで横方向にも縦方向にも連絡できるようになっています。これによって、ある道管で泡が発生しても、そこに流れていた水は壁孔などを通して他の道管に連なることができ、水柱が途切れないようにしています。この道管を相互に連絡している孔を水分子は透過できますが、泡のような水分子に比べ桁違いに大きいものは通れないようになっていています。このように水が他の道管に連結できるのは、横方向にも縦方向にも可能であり、泡が発生した道管を避けて、水柱が断ち切られないようにしています。これによって昼間にいくらか泡がある道管に生じても、泡によって水の移動は妨げられないようになっています。
昼間、蒸散が盛んで、蒸散流として水の移動が盛んな時は、負圧が高く温度も高いため泡ができ易くなりますが、夜間になって気孔が閉じ、蒸散流が止まると、水を引っ張り上げていた負圧がかからなくなります。さらに、夜間になって温度が低くなると、昼間に生じた泡の気体が水に溶け、水蒸気は液体の水になり、キャビテーションは消失します。土壌水と根の細胞に含まれる成分の濃度差によって水を地上部に押し上げている根圧は0.05〜0.5 MPa程度ですが、根圧は昼夜共に一定です。夜間、蒸散流がないとき、根圧は道管内の泡が消えた所に水を押し上げるために寄与していると考えられます。
根から吸収された水が大木の先端まで道管を通って移動する機能は植物が成長、生存するために絶対に必要ですが、これについては本質問コーナーでたびたび触れられています(質問登録番号0656, 登録番号1457, 登録番号1918への回答)。今回は道管を経て水が移動する際、道管に泡が生じると(キャビテーション)水の移動が妨げられますが、それを植物がどうして防いでいるかのご質問です。動物の血管に泡ができると血流が妨げられ、致命的障害を与える塞栓(そくせん)症状を、どうして植物が防いでいるかを考えてみたいと思います。
昼間、葉の気孔が開き、蒸散作用で水が気体となって大気中に飛散しているとき、道管の中では水が葉に引っ張り上げられた状態になります。この時、道管の中の水には(重力に逆らって)引っ張り上げるために相当に負圧がかかっています(100 mの高さの樹木であれば − 3 MPa)。この導管内の負圧は比較的簡単な装置で測定できますが、この低い圧力の下で、水に溶けていた気体(もともと土壌水分に溶けていた大気成分;酸素、窒素、二酸化炭素)や水そのものが、気体になりやすくなります。さらに、恒温動物と異なり植物の幹,茎の道管の温度は気温によって変動しますが、昼間に温度が上昇すれば気体(泡)が生じやすくなります。このように昼間の低圧、温度上昇によって泡ができやすくなりますが、この泡が道管(直径は0.6 mm以下)で発生し、道管の直径より大きくなって、水柱が泡で断ち切られる事態なれば、水の移動が進行できなくなります。これを防ぐため植物は、道管で小さな泡が発生すれば、別の道管に水が連なるようにし、水柱が全体として泡で立ち切られないようにしています。
道管、(仮道管)の構造の詳細は植物生理学の教科書を見ていただくとして、道管は根から葉まで続いて一本のパイプとして独立しているわけではありません。道管は数本が並んでいて、相互に壁孔などで横方向にも縦方向にも連絡できるようになっています。これによって、ある道管で泡が発生しても、そこに流れていた水は壁孔などを通して他の道管に連なることができ、水柱が途切れないようにしています。この道管を相互に連絡している孔を水分子は透過できますが、泡のような水分子に比べ桁違いに大きいものは通れないようになっていています。このように水が他の道管に連結できるのは、横方向にも縦方向にも可能であり、泡が発生した道管を避けて、水柱が断ち切られないようにしています。これによって昼間にいくらか泡がある道管に生じても、泡によって水の移動は妨げられないようになっています。
昼間、蒸散が盛んで、蒸散流として水の移動が盛んな時は、負圧が高く温度も高いため泡ができ易くなりますが、夜間になって気孔が閉じ、蒸散流が止まると、水を引っ張り上げていた負圧がかからなくなります。さらに、夜間になって温度が低くなると、昼間に生じた泡の気体が水に溶け、水蒸気は液体の水になり、キャビテーションは消失します。土壌水と根の細胞に含まれる成分の濃度差によって水を地上部に押し上げている根圧は0.05〜0.5 MPa程度ですが、根圧は昼夜共に一定です。夜間、蒸散流がないとき、根圧は道管内の泡が消えた所に水を押し上げるために寄与していると考えられます。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2009-06-04
浅田 浩二
回答日:2009-06-04