一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ツバキの葉について

質問者:   その他   中野 雄介
登録番号0199   登録日:2005-01-15
椿はどうして葉にアルミニウムを貯えるのか、教えてください!
中野 雄介さま

 一般に樹木で酸性土壌(Alが多量に溶解している)で良く育つ物は多量のAlを含む物がたくさんいます。良く知られている物につばきと同じ属にあるチヤがあります。チヤは重要な作物であることから比較的研究例は多いですが、一般に樹木の研究はあまり進んでいません。一般的に言ってAl は植物の生育を強く阻害(特に1年性の作物で研究が進んでいる)することは良く知られています。従ってなぜツバキ(チヤ〕がAlを多量にふくむかということは吸収するAlによる害を受けにくい仕組みによると考えられます。

1.一般にチヤのAl吸収は非常にゆっくりであり、作物(コムギ、大豆、オオムギなど)に比べてAlの傷害を受け憎い。

2.チヤ(ツバキ)にAlが多いといってもチヤは3年で落葉する。1年目の若い葉にはAl含量は少なく、3年目の葉には大量のAlが集積している。このことはチヤがゆっくりAlを吸収して古い葉に時間をかけて蓄積することを意味します。

3.古い葉のAlの集積場所は葉の表皮細胞に局在します。このことは根から吸収されたAlが葉脈を通ってゆっくり時間をかけて運ばれて葉の表皮までたどりついてそこで蓄積されると考えられます。

4.表皮細胞を若い葉と古い葉で比較すると若い(1年)葉の表皮細胞は小さく縦に長いですが、古い葉では大きく横に広がっています。しかも古い葉の表皮細胞の細胞壁は大きく肥厚しています。Alはこの肥厚した細胞壁に集積していると考えられます。

5.チヤ(ツバキ)は特殊成分として多量のフェノール化合物を含みこれらはAlと良くキレート結合してAlを無毒化します。このこともチヤが大量のAlを含んでいる原因と考えられます。

6.チヤをAlを含む水耕液で育てるとAlを含まない液に比較して生育が促進されます。根の新根の発生がよく地上部での生育も促進されます。従ってチヤでは根でAlが何か促進的な役割を果たした後、徐々に葉に運ばれると考えられます。促進効果は良く分かっていないがチヤはリン酸の過剰の害を受けやすく、Alが過剰のリンと結合してその害を抑えるとの考えもあります。

以下に文献を紹介します。参考にして下さい。

Matsumoto,H et al。 Localization of Aluminium in tea leaves. Plant Cell Physiol.17:627-631(1976)
小西茂毅 チヤ樹の生育に対するアルミニウムの役割 雑誌 茶 33巻12号(1980)、34巻1号(1981) 静岡県茶学会議所出版
岡山大学
 松本 英明
回答日:2008-08-07