質問者:
自営業
星の王子
登録番号1990
登録日:2009-06-08
以前、何かの資料で根系の特徴として、幹ほど激しく木化しない、髄を持たないものが多い、葉緑素を持たない、などのことを知りました。そこで新たな疑問です。なぜ根系は幹ほど激しく木化しないのでしょうか?根系の特長について
それには理由があると思うのですが、どんな目的で激しく木化せず、また、髄も持たないものが多いのでしょうか?
星の王子様
本コーナーへの度々のご来場を歓迎します。私が担当するのは初めてかと思います。さて、以下のご質問ですが、とても難しい問題です。なぜなら、自然科学は「どんな目的で」とか「なぜ」とか言う質問には答える事ができないからです。勿論憶測で答える事はできますが、現時点では科学的な証拠があっての事ではありません。したがって、答えは回答者の主観的な見解ということになります。もっとも無難な答えは、「長い進化の過程でそれぞれの植物は、生育環境への適応戦略としてそのような形態や構造をもっとも適したものとして作り上げてきた。」ということでしょう。それでは、どのように適しているのかというと、残念ながら明快な答えられません。
質問を観点を別にして考えてみます。つまり、植物にとって木化の意義はなにか。また、随はどんな働きをしているのか。ということです。
木化は細胞壁にリグニンが加わることで起ります。個々の植物細胞はその成長が終わると細胞壁は木化が進行して堅くなります。このために、組織全体が強固となります。つまり、木化の主たる働きは植物体に力学的(機械的)な強さを持たせる事だと言えましょう。根でもその力学的な強固さ(抗張力)はリグニン化の程度に比例するという事が報告されています。リグニン合成に関係する酵素の働きやその酵素の遺伝子の発現を調べた研究によると、根や葉に比べて茎の方がこれらの働きは高いと言う事が分かっています。だから、茎(幹)の方が木化の程度は高いということになります。但し、それが「激しい」かどうかはなんともいえません。このような木化の意義を考えると、茎(幹)は重力に逆らって成長するわけですから、より力学的に強固になる必要がある考えられます。それが、根と茎(幹)とで木化の程度に違いがある理由の一つかもしれません。 他方、随についてですが、ある人は「根の随は茎の随とは同じであるかどうか現時点ではまだ明らかでない」といっています。しかし、いずれにしろ随を構成しているのは主に柔組織とよばれるもので、一般にサイズの大きい、薄い細胞壁の細胞から成っています。
随の主な機能は養分を貯蔵する事とそれを他の組織へ輸送する事にあると言ってよいでしょう。また、水分を沢山含んでいる事もあります。茎は根に比べて、構造はやや複雑であり、成長する部分は大です。それを考えると、茎の成長と生命活動の維持に必要な養分は根よりも多いと言えます。また、消費される水分も多い。したがって、茎には随のような組織の存在が必要だといえます。根では、勿論、随組織を持つ植物もありますが、それがなくても成長には差し支えがないのかもしれません。
以上はもちろん私の主観的解釈です。
本コーナーへの度々のご来場を歓迎します。私が担当するのは初めてかと思います。さて、以下のご質問ですが、とても難しい問題です。なぜなら、自然科学は「どんな目的で」とか「なぜ」とか言う質問には答える事ができないからです。勿論憶測で答える事はできますが、現時点では科学的な証拠があっての事ではありません。したがって、答えは回答者の主観的な見解ということになります。もっとも無難な答えは、「長い進化の過程でそれぞれの植物は、生育環境への適応戦略としてそのような形態や構造をもっとも適したものとして作り上げてきた。」ということでしょう。それでは、どのように適しているのかというと、残念ながら明快な答えられません。
質問を観点を別にして考えてみます。つまり、植物にとって木化の意義はなにか。また、随はどんな働きをしているのか。ということです。
木化は細胞壁にリグニンが加わることで起ります。個々の植物細胞はその成長が終わると細胞壁は木化が進行して堅くなります。このために、組織全体が強固となります。つまり、木化の主たる働きは植物体に力学的(機械的)な強さを持たせる事だと言えましょう。根でもその力学的な強固さ(抗張力)はリグニン化の程度に比例するという事が報告されています。リグニン合成に関係する酵素の働きやその酵素の遺伝子の発現を調べた研究によると、根や葉に比べて茎の方がこれらの働きは高いと言う事が分かっています。だから、茎(幹)の方が木化の程度は高いということになります。但し、それが「激しい」かどうかはなんともいえません。このような木化の意義を考えると、茎(幹)は重力に逆らって成長するわけですから、より力学的に強固になる必要がある考えられます。それが、根と茎(幹)とで木化の程度に違いがある理由の一つかもしれません。 他方、随についてですが、ある人は「根の随は茎の随とは同じであるかどうか現時点ではまだ明らかでない」といっています。しかし、いずれにしろ随を構成しているのは主に柔組織とよばれるもので、一般にサイズの大きい、薄い細胞壁の細胞から成っています。
随の主な機能は養分を貯蔵する事とそれを他の組織へ輸送する事にあると言ってよいでしょう。また、水分を沢山含んでいる事もあります。茎は根に比べて、構造はやや複雑であり、成長する部分は大です。それを考えると、茎の成長と生命活動の維持に必要な養分は根よりも多いと言えます。また、消費される水分も多い。したがって、茎には随のような組織の存在が必要だといえます。根では、勿論、随組織を持つ植物もありますが、それがなくても成長には差し支えがないのかもしれません。
以上はもちろん私の主観的解釈です。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2009-06-15
勝見 允行
回答日:2009-06-15