一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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雄原細胞ついて

質問者:   教員   むーむー
登録番号1994   登録日:2009-06-11
生徒に質問を受けて答えられなかったのですが、
花粉細胞が不均等な分裂を行った後、大きな細胞が小さな細胞を飲み込み、小さな細胞は雄原細胞と呼ばれ、大きな細胞は花粉管細胞呼ばれるというようになると教えた所、雄原細胞は二重膜なのかという質問を受けました。エンドサイトーシスで取り込まれるであれば、二重膜となると思うのですが、そうような記述をみたことがありません。実際はどうなっているのでしょうか。
むーむー さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。

若い頭は、ふだん私たちが見過ごしてしまうことによく気がつくものだと感服しました。エンドサイトーシスの現象をよく理解した上ででる鋭い質問ですね。さて、このご質問は花粉管が胚珠に向かう分子レベルの仕組み解明や植物の受精の瞬間を画像として捉えるなど植物生殖生理学で最先端の研究をされている名古屋大学の東山哲也先生に伺い、次のようなご説明をいただきました。ご質問には明快にお答えいただいていますので生徒さんも納得されると思います。


【東山先生の回答】
雄原細胞はエンドサイトーシスで花粉管細胞(栄養細胞)に取り込まれますので、二重膜の状態で存在します。この状態のまま、雄原細胞は分裂し、2つの精細胞になります。つまり、2つの精細胞も、花粉管細胞の細胞膜に由来する膜で包まれています。花粉管の中を2つの精細胞が前方に進んでいくのは、自分自身で移動しているわけではなく、この大きな膜につつまれて前方に輸送されているからです。ちなみに、この膜の花粉管先端側と、栄養核は物理的に連結されており、栄養核に先導されるかのようにセットで前に進んで行きます。

 胚嚢内で花粉管先端が破裂し、精細胞が放出された後は、この精細胞の外側の膜は観察されません。精細胞が花粉管から放出される際に、物理的に失われるのではないかと想像されています。外側の膜はなくなるので、2つの精細胞はそれぞれ別個に、卵細胞あるいは中央細胞の膜と融合でき、重複受精が達成されます。この際、精細胞や、卵細胞と中央細胞の受精が起こる領域には、細胞壁はありません。雄原細胞が花粉管細胞に取り込まれた直後には、細胞壁成分が観察されます。受精前までに分解されるということになりますが、その詳しい制御のしくみはわかっておりません。

東山 哲也(名古屋大学大学院理学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2009-06-12
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