一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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葉の切れ込みについて

質問者:   中学生   桃太郎
登録番号1995   登録日:2009-06-13
シュンギクやタンポポの葉は
切れ込みが深いですが
なぜなのでしょうか?
光合成できる面積が狭くなるし、
効率が悪いのではないでしょうか。
キク科は花が進化していることで、
葉にはコストをかけないのでしょうか。
桃太郎 さま

 葉の形は植物それぞれの種によって特徴があり、切れ込みをもつ葉でもモミジのような切れ込みが深いタイプや、ご質問のシュンギクやタンポポのようにあまり切れ込みの深くない葉もあります。ご質問は植物の葉の形について非常に基本的な点についての、興味のある鋭い質問ですが、お答えするのが大変むつかしい問題です。
 
現在、葉の形は多くの遺伝子によって決められていることが明らかにされ、これらについては本質問コーナーの質問登録番号1900、登録番号1919、登録番号1627, 登録番号1567への回答をご覧になれば、葉の形を決めている遺伝子や、それを解析する方法などが記されています。また、本学会が出版している“植物まるかじり叢書”(4)(化学同人、2008)の第4章に、多くの例や解析法が解説されています。さらに、遺伝子変異が保存されやすい園芸植物のアサガオについて葉の形(野生型の切れ込みのある葉、丸葉など)についてのトッピクもあります。少し背伸びをしてこのような分野の研究の最前線も見て下さい。

モミジの葉は典型的な切れ込みをもっていますが、日本に生えている秋を彩るモミジは、葉の大きさや切れ込みの程度が異なる次の3種があります;オオモミジ(葉のサイズが最も大きく、切れ込みの数は8、切れ込みの程度(割合)は最小)、ヤマモミジ(葉のサイズは3種の中間、切れ込みの数は6)、庭木によく植えられているイロハモミジ(葉のサイズは最小、切れ込みの数は4、切れ込みの程度は最大)。この様に葉の大きさ、切れ込みの程度の異なる3種のモミジは、どこにでも生えているわけではなく、それらの自然植生での分布は異なっています。ヤマモミジは青森県から福井県に至る日本海側、イロハモミジは本州北部以外の太平洋側と九州、オオモミジはイロハモミジの生えている地域に加え本州北部、北海道にも生えています(酒井聡樹)。これから、例えば、イロハモミジ、ヤマモミジの葉の形は北海道には適していないことがわかります。しかし、なぜ、オオモミジの葉が北海道に適しているかは、北海道の気温、積雪量、そこの住む動物、昆虫とモミジの葉形との関係など、いろいろ考えられますが、わかっていません。ご質問のシュンギク、キクの葉が、なぜ切り込みが多いかたちになっているか、これらの植物にとってなぜ有利なのかはモミジの例と同様にまだ、これからの研究問題です。

JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2009-06-15
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