一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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リンゴについて2つの質問

質問者:   高校生   おたね
登録番号1998   登録日:2009-06-19
リンゴを紙袋と黒いビニール袋にそれぞれ入れ、2週間後に検知管でエチレン濃度を測定しました。すると予想通り、ビニール袋の方の濃度が何倍も多いことがわかりました。そこでそのまま袋の入れてさらに2週間放置しました。そして袋をあけてみると、紙袋のリンゴの方があきらかに鮮度が落ちていました。高濃度のエチレンが密閉された空間であるビニールの方が早く鮮度が落ちると思っていたのでびっくりしました。インターネットでリンゴの保存について調査すると

①低温で貯蔵すると良い
②密閉すると良い

という2つがあげられていました。
①は呼吸を抑えるためだと想像できます。しかし②はわかりません。ただ②は黒ビニールに入れた状態と同じで、確かに長持ちしています。なぜ通気性のある紙袋の方が早く鮮度を落とすのか、その理由を教えてください。もうひとつはリンゴの糖度です。収穫までリンゴに袋をかぶせていたら甘さは落ちますか?葉の数が同じだとしたらどうでしょうか。教えてください。
おたね さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。

リンゴの長期保蔵についてはたくさんの研究が行われ、現在では低温、低酸素、高湿度条件を中心とするCA貯蔵(Controlled Atmosphere Storage)が行われています。加えて二酸化酸素濃度をわずかにあげることも品種によっては行われています。ガス環境を調整するのですから「密閉」することは必要です。これらの条件は1)呼吸その他の代謝を低下させ、2)乾燥を防ぎ、3)エチレン生成と作用を抑制する条件となっています。

さて、おたねさんの実験結果で「鮮度」をどのように判定されたのでしょうか。実験開始の時期(収穫後の時間)、保存の温度が記載されていませんので、この時期の質問と言うことで、4月以降に入手したリンゴを、常温においたことを前提に考えてみました。昨年に収穫されたリンゴが市場にでたものですからすでにかなりの時間が経っています(すでにCA貯蔵されたもの)。そのようなリンゴを紙袋にいれて4週間常温におけば乾燥して表面にしわがよりはじめていると思います。そのため見た目で「鮮度」が落ちたと判定されたのではないでしょうか。一方ビニール袋に入れたものでは密閉条件ですから乾燥しません。また、エチレンの濃度が高くなると同時に呼吸によって二酸化酸素の濃度もかなり高くなっていると思われます。このような条件ではエチレンの作用は二酸化炭素によって抑制されますので軟化も抑制され、紙袋にいれたものに比べ見かけの「鮮度」が保たれたのかも知れません。
おたねさん、紙袋とビニール袋においたものを食べてみましたか。保蔵の問題は見た目も大切ですが食感、食味が保たれるかどうかも大切なものです。


リンゴ栽培では袋かけをする有袋栽培と袋かけをしない無袋栽培の両方が用いられています。それぞれ一長一短ありますが、無袋栽培のリンゴは太陽に十分あたりながら生育しますので糖度があがります。そのため、無袋栽培のリンゴには品種名の前に「サン」とつけています。(「ふじ」の無袋栽培リンゴは「サンふじ」というように)。しかし、病害特に虫害を受ける確立は高くなります。有袋栽培では幼果のときから光にあたらず、風雨から守られて生育するので果肉は均一で外観が美しくなめらかになりますが糖度はあがりません。収穫前に光を当てると全体が均一に着色して見た目がたいへんきれいになります。経験的に有袋栽培リンゴの方が保蔵性は高いと言われています。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2009-06-29
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