一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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もやしの変色について

質問者:   会社員   ホンダ
登録番号2000   登録日:2009-06-22
商品である「もやし」の一部が青色に変色しているとの申し出があり、現物は確かに濃い青色をしていました。
インターネットより、もやしには「アントシアニン」が含まれ、金属イオンとの反応で稀に変色することがあることまでは調べがつきました。
青く変色した部分を外部分析にて調べると、青い部分より「アルミニウム」が検出されたとの結果が出ました。
そこで質問なのですが、「もやし」が生育するうえで、水を吸い込み体内に「アルミニウム」を蓄積することはあるのでしょうか?
また、ボイル等の過熱をすることで、その部分が青色に変色することはあるのでしょうか?
どうぞ、よろしくお願いいたします。
ホンダ様 

 質問コーナーへようこそ。ご来場歓迎いたします。すでにもやしにアントシアニンが含まれる事、青色変色部分からアルミニュウムが検出された事をお調べになっておられるようですので、この点についてはごく簡単にコメントしておきます。

 アントシアニンは酸性条件で赤系統の色、アルカリ条件で青系統の色を発しますが、植物の細胞の中では金属イオンと錯体を形成して発色する事がしられています。アジサイやヤグルマギクなどの青色はアルミニュウム(Al)などの金属イオンとの錯体によるものだと分かっています。Alは水酸化アルミニュウムの形で土壌に存在し、土壌が酸性だとALは水に溶けやすくなり、根から吸収されていきます。詳しくは本学会ホームページの市民講座を訪れ吉田久美先生の「多彩な花色のしくみー」をご一読下さい。

 さて、植物にとってAlは一般に有害で、成長を阻害します。特に根の成長を抑制します。したがって、植物を栽培するときにAlを含む肥料を与える事はありません。もやしはモヤシマメの種子を暗黒で発芽させた芽生えで、原則として肥料は与えていないと思います。芽生えを構成している物質は水を除いて、すべて種子に蓄えられた貯蔵物質に由来するとみなされます。だから、もし、もやしにAlが検出されたとすると、それはもともと種子中に残存していたものか、発芽時に給水した水の中にたまたまAlが溶けていて、芽生えが吸収したのでしょう。吸収されたAlはふつう細胞壁、とくにペクチンの部分に吸着しているようです。細胞壁は水が細胞から細胞へ流れていく通路でもあります。また、もちろん液胞の中にも検出されます。もし、種子中にあったAlだとすれば、細胞壁に吸着していたものでしょう。いずれにしても、発芽とともに芽生えではAlは細胞内に移動し、そこでアントシアニンと錯体を形成したと言う事になります。アントシアニンの色の変化はpH(酸性 ~アルカリ性)に依存しますが、ボイルして発色するとは考えられません。ボイルしたことが、pHの変化をもたらしたというのであれば別でしょうが。

以上の説明は、もやしに無色のアントシアニン(中性条件では無色)が含まれており、Alと錯体を形成して青色になるという事を前提にしています。


ホンダ様

先日もやしの青色変化について回答を送りましたが、その中で加熱による変化はないと書きました。あとで考えてみると、もし、もやしを茹でたときに青色の発色があるのだとすれば、茹でることにより細胞組織がこわれるので、細胞壁に吸着していたAlが遊離し、同じく細胞内から滲出したアントシアニンと錯体を作って発色した可能性もありますので、付言しておきます。

勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2009-06-30
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