一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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光合成

質問者:   その他   モリミツ
登録番号2006   登録日:2009-07-01
はじめまして。小学校で理科支援員をしています。
理科の授業で「植物は、自分で養分をつくる」ということ示すために、日光を当てたジャガイモの葉と前の晩からアルミホイルをかぶせた日光を当てなかった葉について、たたき出し法でヨウ素デンプン反応を行いました。その結果、日光を当てなかった葉は、ヨウ素デンプン反応で青紫色に変化し、日光を当てた葉は、ヨウ素デンプン反応で変化しませんでした。6班で実験を行い、ほぼ、全班、同じような結果がでたので、何らかの原因があると思われるのですが、その原因が分りません。実験を行った日は、晴天で、午後からの実験だったのでうまくいくと思っていたのですが、朝の水遣りを忘れていたため、日光に当てた葉は、かなりしおれていて、アルミホイルをかぶせていた葉は、しっかりしていました。そのことが、原因の1つではないかと思ったりするのですが、分りません。
こどもたちに説明したいと思っているので、こどもたちにも理解できるような回答を宜しくお願いします。
モリミツ さま
 
ジャガイモに限らずほとんどすべての植物の葉の裏側に気孔があり、普通、昼間には気孔が開き、水が根、茎から葉に移動し、水蒸気として空気中に放出されます(蒸散作用)。これによって水が蒸発するときに葉の細胞から熱を奪い、これによって日光によって葉の温度が高くなりすぎないよう光合成に適した温度に調節しています。
水が植物に十分に与えられた場合、根から茎、葉の組織、そして気孔への水の移動はよく進行するのですが、しかし、雨が長い間降らないで土の中の水分が少なくなると、すなわち、植物が水ストレス(乾燥ストレス)にさらされると、植物は代謝に必要な水を蒸散作用でどんどん失ってしまい、極端な時には植物が枯れてしまいます。そこで植物は乾燥ストレスにさらされると気孔を閉じて水をできるだけ蒸散によって失わないようにしています。
気孔が閉じると水が植物から蒸散で失われなくなりますが、しかし、気孔のもう一つの重要な機能である、光合成に必要な二酸化炭素(CO2)を空気中から吸収できなくなります。植物が乾燥ストレスに出会うのは、自然界ではしばしばあることであり、そのたびごとに植物体が枯れてしまっては大変なので、乾燥ストレスの間だけは気孔を閉じて水を失わないようにしています。
ご質問のジャガイモの葉を日光に当てた方がしおれていたとのことですが、これは葉の細胞内の水分が減少し、そのため膨圧が低くなったためで、そのような状態で気孔はほとんど閉じ、そのため光合成の原料となる二酸化炭素を吸収できなくなっていると考えられます。デンプンは光合成によってできますが、日光にさらされていても気孔が閉じ二酸化炭素が光合成の進行する葉緑体に送りこむことができないと、デンプンはできません。充分に水を与えたジャガイモの葉で、もう一度、日光を当てた葉と、アルミホイルで日光を遮った葉とで、デンプンのできかたをヨード反応でテストしてみてください。

なお、気孔、蒸散作用、膨圧、二酸化炭素、光合成などは本質問コーナーの索引検索で調べていただければ、それぞれの解説が見られます。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2009-07-01
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