一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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光の色に対する植物の反応が一律でない理由

質問者:   高校生   アコ
登録番号2011   登録日:2009-07-05
論文によれば、「LEDを唯一の光源とし,第一本葉展開後のナス,リーフレタス,ヒマワリに,青,青緑,緑,赤色の単色光を50, 100, 150μmol m-2 s-1のPPFDで照射した.単色光照射開始から,25日後にナス,リーフレタス,42日後にヒマワリの生長を調査した.主茎の伸長は,ナス,ヒマワリにおいて青色光で顕著に促進され,他の単色光ではほとんど促進されなかった.リーフレタスの主茎伸長は,赤,緑,青緑色光の順に促進されたが,青色光では著しく抑制された.また,照射した単色光により全葉長に占める葉柄長の割合は植物種ごとに変化し,単色光照射による植物の生長反応は種により大きく異なった.」とありました。同じ植物なのになぜ植物によって反対の反応が起きるのでしょうか。仕組みがわかっているのですか。また反応が一律でないことは植物にとって良いことがあるのでしょうか。教えてください。
アコ さん

このコーナーに質問をお寄せ下さりありがとうございました。
ご質問には平井正良博士(筑波大学遺伝子実験センター)がお答え下さいましたので、ご参考にして下さい。なお、LED照射下での植物の生育については過去にも本コーナーで取り扱われておりますので、そちらの方もご覧になって下さい(登録番号1244)。また、LEDの光を“単色光”と呼ぶことが多いですが、実際には一定の波長幅の光になっていることも気にしておいて下さい。


(平井先生からの回答)
今回の実験は特殊な環境で行っているので、この結果がすべての植物で当てはまるかどうかについては分かりません。以下は、そのことをふまえた上での回答とご理解下さい。

レタス、ヒマワリ、ナスなどはすべて植物ですが、その形や成長の仕方は大きく異なります。太陽光の下で育てた場合、レタスは茎をほとんど伸ばさずに栄養成長をしますが、ヒマワリは茎を伸ばして成長します。ところで、一般に、植物の成長においては、光は光合成(物質生産)のエネルギー源として利用されるだけでなく、外界を知る情報(シグナル)源としても深く関係しております。

青色光の下で育てた場合、茎の伸長がレタスでは抑制され、ヒマワリやナスでは促進されると言う結果が得られております。青色光の下でのこのような形の変化は、他の単色光(例えば、赤や緑)の下で育てた場合のものより、太陽光の下で生育した本来の形に近づいたものと考えることが出来ると思います。したがって、植物は形を制御(正しい形に)するためのシグナルとして青色光を利用しているのではないかと考えております。植物の種類によっては、一見、青色光下で逆の反応が起きている様にみえますが、根底においては同じ反応が起きているのではないかと考えています。

実際に植物体が伸びる原因を調べてみると、ヒマワリでは茎をつくる細胞の数が増えると共に一つ一つの細胞が縦に長くなった結果、茎が長くなります。一方、レタスでは分裂によって生ずる細胞の長さには差がなく、赤色光下では細胞の数が増えて茎が長くなっていました。
一見すると同じように見える植物の反応でも、それが生じる原因は一つではないようです。しかし、これらの仕組みがどうして働くかについてはまだよく分かっていません。

植物を含めた生物は、生育している場所に適応する様に進化し、 多様な形、多様な性質を持っています。だから「同じ植物」とはいえ環境の変化に対して反応が一律であることの方が希ではないかと思います。したがって反応が一律ではないのはその植物種の個性であり、環境に適応するために獲得した性質であると考えられます。

平井 正良(筑波大学遺伝子実験センター)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2009-07-16
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