一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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細胞成長時の細胞膜について

質問者:   その他   神力
登録番号0202   登録日:2005-01-22
こんにちは上記のタイトルについてよろしくお願いします。

オーキシンの作用を受けると植物細胞は液胞において水を吸収することにより細胞を伸長させますが、それは細胞壁を分解して膨圧を減少させることによるとよく聞きます。
その時の細胞の伸長量はかなり大きいですが細胞膜はどのようにしてその伸長に対応するのでしょうか?
エキソサイトーシスの場合内容物の大量な放出はないのでしょうか?
また液胞膜についてはどうなのでしょうか?
そしてそれらはどのようにして協調性を持たせるのでしょうか?
質問の連続になってしまいましたが、よろしくお願いします。
神力さま

 細胞膜の成分は、基本的に内膜系からの小胞輸送によって供給されます。細胞成長と細胞膜合成の関係を調べた研究例は多くないのですが、オーキシンが小胞体から細胞膜への膜成分の移動を促進するという報告(下記)がありますので、成長速度が大きい時にはこの小胞輸送系が活性化されるものと思われます。合成される細胞膜の量は多そうに見えますが、内膜系の総量はそれをはるかに超えています。代謝回転を少し速くするだけで、十分に対応できるはずです。また、細胞成長時には、細胞膜ばかりでなく、細胞壁の量も速やかに増やす必要があります。ゴルジ体経由で細胞壁成分をエキソサイトーシスする過程を活性化すれば、細胞膜と細胞壁両方の供給を促進することができます。オーキシンによる細胞成長が、膜成分(脂肪酸)合成阻害剤、細胞壁多糖合成阻害剤、そしてゴルジ体機能の阻害剤によって抑制される事実は、この可能性を支持しています。 液胞膜も、小胞体あるいはゴルジ体からの小胞輸送経路によって合成されます。細胞成長時には、確かに、こちらの経路も活性化されるはずですね。両方向への輸送の分岐となるゴルジ体あたりで何らかの調節がなされているはずですが、その実態はまだよくわかっていません。

文献: Hager A. et al. Planta 185: 527-537 (1991)
大阪市立大学
 保尊 隆享
回答日:2009-07-03
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