一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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藻から油を作るとは

質問者:   自営業   マツケムシ
登録番号2025   登録日:2009-07-19
昨今マスコミでは、「藻から油」を生産する方法があること、あるいは事業化しつつある企業がある等、報道があります。大豆や菜種、あるいはトウモロコシから油脂やエタノールを得るよりは、格段に効率がよいとか。なるほど光合成の生産物を「茎」という形に変換する地上作物よりは、それが不要な「藻」の方が直接「油」に変換されて効率がよいのだと思います。しかし、私は具体的な方法は、全くイメージできません。そもそも、どういった仕組みなのか、概略がわかれば教えて下さい。
マツケムシ さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
化石燃料がやがて枯渇する可能性が指摘される現在、光合成で有機物を生産する緑色植物に燃料生産を期待する動きが活発です。植物が生産する糖類を発酵させてつくるバイオエタノール、油脂類を加工してつくるバイオディーゼル油、テルペン類を抽出する代替軽油などの技術的開発が盛んに行われています。穀類やいも類は多糖類を、多くの種子は油脂類を、多くの針葉樹、ゴムノキなどは全身にテルペン類を蓄積します。このような植物成分を燃料という工業品として利用するためには、多糖類、油脂類の生産量が高いこと、栽培、培養が容易なこと、収穫後の処理が簡便なことなどがあります。また、食用作物であっては意味がありません。これらの条件を満たす植物の探索が積極的に行われており、その中に微細藻類も含まれています。微細藻類は単位面積あたりの光合成生産量が高く、培養も可能なことから広範囲な探索が行われ、油脂類や炭化水素を蓄積する微細藻類がいくつか発見されています。ゴマやダイズ、アブラヤシの種子に脂質が蓄積するように、その種の微細藻類は細胞内に油脂類、炭化水素を蓄積するものです。テルペン類を含む油脂類を合成する能力はすべての生物が持つものですがどのような油脂類を主に合成、蓄積するかは植物種によって違いますので目的にあう植物、藻類を探してきた結果です。今後は、近代バイオテクノロジーを駆使してより好ましい油脂類、炭化水素をより高く生産する系統の藻類を作出することも夢ではありません。微細藻類であれば、含まれる油脂類、炭化水素を抽出することや抽出残査の再利用も比較的容易ですので大いに期待されています。炭化水素生産微細藻類の炭化水素蓄積の仕組みはこれからの研究課題ですが、動物、植物での脂肪酸類、直鎖・環状炭化水素類生合成の一般的経路は明らかにされています。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2009-07-22
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