一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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発芽の力

質問者:   小学生   haru
登録番号2035   登録日:2009-07-28
アスファルトを突き破ったり、物を持上げたり、発芽の力は凄いと思います。
今回、芽が持上げることのできる重さの実験をしたいと思います。
具体的にどのような実験方法を使えばよいのか良い案が思いつきません。
何かを乗せておもりにしても、それだけでは傾いて倒れてしまいそうです。
何グラムを何ミリ持上げたとか、データをとってみたいと思います。
アドバイス、よろしくお願いします。
haru さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
夏休みの自由研究を考えているようですね。でも今考えている「発芽の力」を測ることはかなり難しいようです。まず問題を整理してみましょう。植物が成長するときには「長くなる」ことと「太くなる」という2つのことがおこります。ものを「持ち上げる力」は「茎が長くなる力」ですが、アスファルトなどを「突き破る力」にはもう1つ「太くなる」力が加わっています。「アスファルトを突き破ったり」で表現できるように、見た目では「突き破った」ように見えますが、実際は少し違います。地中で発芽した芽生えは、細い茎や根が土壌の小石、砂などの隙間に入り込み、太くなる力で隙間を押し広げるように成長します。アスファルトや岩などに達したとき、割れ目などの隙間がなければ突き進むことはできません。アスファルトを突き破ったように見えるのは、アスファルトの割れ目の中に入り、成長して顔を出すものです。そこで、隙間に入り込んだ細い茎や根はその場で太く成長します。そのときの力はとても強く、隙間を「押し広げる」ことができるほどです。岩手県盛岡市の地方裁判所に「石割桜」という有名なサクラがあります。大きな花崗岩の割れ目の中に太い幹を差し込んでいるサクラです。もともとあった割れ目の中に種子が落ち、そこで発芽して、太く成長する力で割れ目を押し広げながら長く成長してきた結果とされています。ですから、ここで「大きな力」となっているのは茎がおもりを「持ち上げる力」と茎や根が成長で「ふくらむ力」が協力したものです。
Haruさん、「力をはかる」ということは簡単なようでかなり難しいことです。伸びる力、ふくらむ力は伸びる方向やふくらむ方向に外から力を加えて伸びなくなる、ふくらまなくなるために必要な外からの力をはかるので、特別な装置が必要です。そこで家庭でもできる良い方法はないかと考えてみました。実際に実験していませんので、まったくの想像実験の計画ですが、「私ならまず試してみる」と考えたものです。

芽生えが伸びる力をはかる方法
1.ガラスコップや計量コップのような円筒型の容器をいくつか用意します。
2.上の円筒に内側にちょうど入るような円盤をつくります。発砲スチロールのような軽い材質がよいでしょう。落としぶたのような具合です。
3.植物の種子を、洗濯用の漂白剤(塩素系の漂白剤)を10〜20倍くらいに薄めた液にいれてよくかき混ぜ、洗うようにして10分くらいおいてからよく水道水で洗います(表面についている微生物を殺し殺菌するためです)洗った種子を1の円筒容器に入れて水道水をひたひたになる程度入れて1晩おきます。容器はラップなどで蓋をして雑菌が入らないように注意します。豆類(ダイズ、インゲン、モヤシマメ、ソラマメなど)が使いやすいとは思いますが、他の種子でもかまいません。種子屋さんでいろいろ買ってきて試してみてください。
4.1晩おいて、水でふくらんだ種子を水道水でよく洗い、1の円筒容器の底に1層あるいは2層程度敷き詰め(種子の数を記録します)、水をひたひたになる程度いれ、室温においておきます。はじめは押入や箱にいれて暗いところで生育させたほうがよいかも知れません。芽生えがよく揃うからです。種子の種類によって違いますが2日ないし3日たつと発芽して、茎が1〜2センチメートルくらいになったら2の円盤を芽生えの上に載せます。芽生えの高さはだいたい揃っているはずなのでうまく乗せられると思います。同じものを、少なくとも5セットくらい用意する必要はあるはずです。
5.本番の実験です。円盤の上に重さの分かっているおもり(円盤が斜めになっても転がらないような平らな石や小袋に入れた小石、砂など。重さを量っておく)を乗せて円盤の高さをまず測ります。次に一定の時間(たとえば10時間)後の高さを測ります。おもりを乗せない(円盤を乗せただけ)芽生えの成長と比べる必要がありますのでおもりを乗せないものは必ず同時に用意します。たとえば、おもりを乗せない、おもりを10g、15g、20g、30gのせたものについて同時にはかってください。
おもりが重すぎると芽生えの茎がすぐに曲がって円盤は下がるかも知れません。
6.違った重さのおもりを乗せた実験で、一定時間後にどれだけ円盤が押し上げられたかをはかり、比べます。芽生えの数で乗せたおもりの重さを割れば、1本あたりの芽生えがどれくらいの重さのおもりをどのくらい持ち上げるかを計算することができます。
7.実際に、はじめてみると思いがけないことが起きると思います。うまくいかなかったら、理由をよく考え、工夫して解決する必要があります。それが研究です。1度やってうまくいかないから止めてしまっては何もできません。何度も同じことを繰り返していると、少しずつ上手くいくようになります。
あきらめずに、やり遂げてください。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2009-07-30