質問者:
小学生
いっそー
登録番号2047
登録日:2009-08-10
うちにはブルースターという花があります。お母さんが、その花を切ったとき、白い液体が出てきました。これは一体なんだろう?と思って、今年の自由研究にいろいろな植物の茎を観察することにしました。みんなのひろば
ブルースターの白い液体
茎の観察はしているのですが、最初の疑問だった白い液体の正体がわかりません。インターネットなどで、白い液体のことは「かぶれる。毒がある」とは出ているのですが、その液体が、何のために出ているのかが、わかりません。教えてください。
代筆:母
いっそー様
みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。頂いたご質問の回答を、千葉大学の山崎先生にお願いしましたが、ブルースターの乳液そのものにつての研究はまだ進んでないらしく、以下ような乳液一般についてのご回答をお寄せ下さいました。ご参考になればと思います。
ブルースターの白い液体
ブルースターは青色の花をつけるガガイモ科の植物で、最近花屋さんでもよく見かけるようになりました。この植物の葉や茎を切ると白い汁(乳液)が出ます。この汁が皮膚につくと人によってはひどいかぶれ(接触性皮膚炎)を起こします。これは、原因となる「抗原(アレルゲン)」と体内の「抗体」が反応して起こるアレルギー反応ですが、ブルースターの乳液中のどの成分が抗原になるかはわかっていません。
さて、茎や葉の傷口から乳液を出す植物はいろいろあります。タンポポ、サツマイモ、イチジク、ゴムノキ、パパイアなどが身近でしょうか。乳液は、水に溶けにくい物質が微粒子となって水に分散したものです。この微粒子で光が散乱するので白く見えます。微粒子の中身は植物種によっていろいろです。ケシのモルヒネ(麻薬、鎮痛剤)やトウワタの強心配糖体配糖体など顕著な生理活性や毒性をもつ化合物が知られています。これらの毒は、植物にとっては傷害を受けた時の防御作戦だったのだろうと考えられます。私たち人類はこれらの毒を薬としても利用してきました。
また、ブルースターと同様にかぶれる植物として有名なのはウルシです。ウルシの乳液はウルシオールという化合物群を含んでいます。ウルシオールは乳液中のラッカーゼという酵素のはたらきで酸化・重合し、堅牢な重合体を形成し植物の傷口をふさぎます。これを利用したのが「漆塗り」です。重合したあとの漆には抗原性はありません。ウルシオールはマンゴーの果皮やカシューナッツの殻にも含まれていて、これらの食品でアレルギー反応を起こす人もいます。天然ゴムもパラゴムノキなどの樹液を重合させて固めたもので、植物由来の様々な生体防御タンパク質を含み、ラテックスアレルギーの原因となります。このように強力なアレルゲン性をもつことは、植物を傷つける動物等に対する防御機構とも考えられます。
さらに、植物と昆虫の間でおもしろい生存戦略が繰り広げられています。アサキマダラという蝶の幼虫は、ガガイモ科のキジョラン、カモメズル、イケマなどを食草として育ちます。これらの植物の乳液にはアルカロイドやカルデノライドなどの毒成分が含まれます。アサギマダラの幼虫はこれらの毒を体内に蓄積して成虫になります。成虫は鳥から毒虫として嫌がられるので、食べられずに生き残ることができます。また、クワの乳液には害虫のガの幼虫に対して強い毒性を示すアルカロイドが含まれますが、クワを餌として飼育されるカイコにはこの毒が効きません。おそらくカイコは長い進化の過程でクワの防御機構を克服し適応してきたと考えられます。
このように植物乳液は、生物の進化や人類の文明の発達にまで深く関わっています。
山崎 真巳(千葉大学)
みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。頂いたご質問の回答を、千葉大学の山崎先生にお願いしましたが、ブルースターの乳液そのものにつての研究はまだ進んでないらしく、以下ような乳液一般についてのご回答をお寄せ下さいました。ご参考になればと思います。
ブルースターの白い液体
ブルースターは青色の花をつけるガガイモ科の植物で、最近花屋さんでもよく見かけるようになりました。この植物の葉や茎を切ると白い汁(乳液)が出ます。この汁が皮膚につくと人によってはひどいかぶれ(接触性皮膚炎)を起こします。これは、原因となる「抗原(アレルゲン)」と体内の「抗体」が反応して起こるアレルギー反応ですが、ブルースターの乳液中のどの成分が抗原になるかはわかっていません。
さて、茎や葉の傷口から乳液を出す植物はいろいろあります。タンポポ、サツマイモ、イチジク、ゴムノキ、パパイアなどが身近でしょうか。乳液は、水に溶けにくい物質が微粒子となって水に分散したものです。この微粒子で光が散乱するので白く見えます。微粒子の中身は植物種によっていろいろです。ケシのモルヒネ(麻薬、鎮痛剤)やトウワタの強心配糖体配糖体など顕著な生理活性や毒性をもつ化合物が知られています。これらの毒は、植物にとっては傷害を受けた時の防御作戦だったのだろうと考えられます。私たち人類はこれらの毒を薬としても利用してきました。
また、ブルースターと同様にかぶれる植物として有名なのはウルシです。ウルシの乳液はウルシオールという化合物群を含んでいます。ウルシオールは乳液中のラッカーゼという酵素のはたらきで酸化・重合し、堅牢な重合体を形成し植物の傷口をふさぎます。これを利用したのが「漆塗り」です。重合したあとの漆には抗原性はありません。ウルシオールはマンゴーの果皮やカシューナッツの殻にも含まれていて、これらの食品でアレルギー反応を起こす人もいます。天然ゴムもパラゴムノキなどの樹液を重合させて固めたもので、植物由来の様々な生体防御タンパク質を含み、ラテックスアレルギーの原因となります。このように強力なアレルゲン性をもつことは、植物を傷つける動物等に対する防御機構とも考えられます。
さらに、植物と昆虫の間でおもしろい生存戦略が繰り広げられています。アサキマダラという蝶の幼虫は、ガガイモ科のキジョラン、カモメズル、イケマなどを食草として育ちます。これらの植物の乳液にはアルカロイドやカルデノライドなどの毒成分が含まれます。アサギマダラの幼虫はこれらの毒を体内に蓄積して成虫になります。成虫は鳥から毒虫として嫌がられるので、食べられずに生き残ることができます。また、クワの乳液には害虫のガの幼虫に対して強い毒性を示すアルカロイドが含まれますが、クワを餌として飼育されるカイコにはこの毒が効きません。おそらくカイコは長い進化の過程でクワの防御機構を克服し適応してきたと考えられます。
このように植物乳液は、生物の進化や人類の文明の発達にまで深く関わっています。
山崎 真巳(千葉大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2009-08-24
柴岡 弘郎
回答日:2009-08-24