一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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野菜の軟化について

質問者:   高校生   あこ
登録番号2051   登録日:2009-08-12
日光を遮り白いアスパラガスやウドなどを作る軟化栽培というものがあります。よく軟化させたほうが果物であれば

①皮が薄くなる
②果肉が柔らかくなる
③果汁が多くなると書かれていますが、それはなぜですか?

またカボチャなど皮の硬い野菜でも、もし軟化すれば理屈では少し皮が柔らかくなるのでしょうか。教えてください。
あこ さま

動物と違って、植物は太陽光を利用する光合成によって二酸化炭素を固定し、これによって成長しています。そのため、光は植物が成長するためどうしても必要ですが、この光合成を進行させる装置である葉緑体をつくり、葉緑体に含まれ太陽エネルギーを捕まえる緑色の色素、クロロフィール、を合成するためにも光が必要です。そのため、例えば、光がない、暗い所で種子をまくと、クロロフィールが合成できないため芽生えは緑にならず、白色―黄色になります。これは黄色の色素であるカロチノイドは光が全くなくても合成されるためですが、この様な芽生えの葉を黄化葉とよんでいます。

光が当たらないと黄化葉になって光合成ができなくなりますが、芽生えは一般に光を求めて細長く伸びるようなります。しかし、この時、植物の細胞壁にあるセルロース、リグニン、ペクチンもあまり合成されません。これらの細胞壁成分は骨のない植物組織の構造を保つ上で非常に重要であり、これによって茎や葉の構造をしっかり作り上げて保ち、風によっても折れにくい、虫によっても簡単に食べられないようになっています。

アスパラガスのように、土を覆うなどの方法で光が当たらないようにすると、アスパラガスの茎はクロロフィールが合成されないため、白くなり(ホワイトアスパラガス)、また、同時に細胞壁成分であるセルロース、リグニン、ペクチンなどもあまり合成されないため茎が柔らかくなります。
 
果実は一般に受精してからしばらくの間は固く、緑色をしているのが普通ですが、これが熟成するにつれ柔らかくなります。果実が緑の硬い間は、クロロフィール、葉緑体をもち、光合成ができます。果実の肥大には葉の光合成産物が大きく寄与しますが、若い時期の果実自身の光合成産物も、果実の肥大にいくらかは寄与しています。果実が緑色の時、その硬さから予想されるように細胞壁が多量に合成されていますが、果実が成熟するにつれ、大抵の場合、果実のホルモンであるエチレンの作用によって、細胞壁が少なくなり、デンプンなどが加水分解され、一般に柔らかく甘くなります。典型的な例はバナナですが、バナナは緑色の硬い状態で輸入され、エチレン処理をして、柔らかく、甘くなった状態になってから市販されています。

カボチャの実は、普通、加熱料理をして利用されるため、また、固いまま長期間保存ができるのがその特長であるため、これを柔らかくする試みはされていません。果実のようにエチレン処理をすれば柔らかくできるかもしれません。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2009-08-24
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