一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ミミツブレという俗称の植物

質問者:   小学生   ノリ
登録番号2068   登録日:2009-09-05
夏休みの宿題で、富山県の昔のことを調べていたら、「ミミツブレ」という植物の名前が、昔の本に出ていました。昔の炭焼き小屋の人が、水道管のようにして使ったものと書いてありました。

おじいちゃんに聞いても、「ミミツブレ」という名前の植物は知らないと言われました。おじいちゃんは、ぞくしょうじゃないか、と言っていました。

どういう植物なのか全然わからなかったので、教えて下さい。
ノリ さま

みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。折角ご質問を頂いたのですが、このような質問は私も、また多分、日本植物生理学会の会員の皆さんも苦手です。それでもどなたか答えてくれる方はないかと、答えてくれそうな方にお願いし、私もいろいろと調べて見ました。お願いした方から何か答えが頂けないかと思って待っていたのですが、まだ頂けておりません。そこで、回答が頂けたら、そのときにまたその方のお答えをお送りすることにして、今日は私が調べた事だけについて連絡いたします。

私が調べたのは、「日本植物方言集成」(八坂書房)という本で、その本には「みみつぶれ」のほかに「みみつぶし」、「みみっぶし」、「みみつぶしくさ」が載っていました。そして、「みみつぶれ」はホコリタケ、「みみつぶし」はイワニガナ、オニタビラコ、ツチグリ、ノゲシ、ホコリタケ(地方によって違う植物を指しているようです)、「みみっぶし」はツチグリ、「みみつぶしぐさ」はオニタビラコと言うことでした。この本で「みみつぶれ」と呼ばれている植物はホコリタケで、きのこの仲間なので、「水道管」のようには使えません。水道管のように使える植物が「みみつぶし」や「みみっぶし」や「みみつぶしぐさ」のなかにないだろうかと考えましたら、ただ一種ノゲシが浮かびました。ノゲシの茎は1メートルほどで中空なので、「水道管」として使えなくもありません。ただ、ノゲシは、私の調べたなかで一番の候補になれそうなものということで、ノリさんが探している「みみつぶれ」かどうかはわかりません。きちんとした答えが返せなくてごめんなさい。


ノリ さま

ミミツブレについて、富山大学の唐原一郎先生を通して、富山大学を退官なっさておられる鳴橋先生から面白い情報が入りましたので、お伝えします。

鳴橋先生からの情報
先日の「ミミツブレ」についてお答えいたします。
富山の山の炭焼きの人が「ミミツブレ」と言った植物が、何かは正確にはわかりません。しかし、私は次のように考えています。
1)新潟県のある地方では、『タケニグサ』のことを「ミミツブレ」というそうです。
2)日本植物友の会編、『日本植物方言集』八坂書房の141頁にタケニグサの方言として新潟県西頸城郡ではツンボオサというのが出ていました。ミミツブレもツンボも同じ意味で、耳が悪くなって聞こえないということですね。
3)タケニグサは茎の高さ1〜2mにもなり、太さも3cmにもなります。茎の中は中空です。水道管としてはちょうど良いと思われます。
4)タケニグサの枯れた状態は、竹のような色で、節が目立ち、竹を連想させます。それで、竹似草という名前が付けられたのです。かって、竹は水道管としては日本中で使われていました。タケニグサも利用しようと思うのは、当然のことだと思われます。
5)タケニグサは、富山の山地の日の良く当たる崩壊地にはよく見られます。よって、富山の炭焼きの人のいう「ミミツブレ」はタケニグサではないかと想像しています。
ところで、タケニグサは、秋に堅く熟した実は、風にそよいで擦れ合い、かさかさという乾いた音をだ> すといいます。この音で人の話声が聞き取れにくい ということから、ミミツブレが出たとも考えられますが、それほど大きな音でもありません。
タケニグサは有毒植物(数種のアルカロイドを含む)で、かぶれることがあるとのこと。子供にはこの植物を食べると、耳が潰れるぞ!という脅しからか。または、植物の汁が耳に付き、耳がかぶれることが多いことからか。
とにかく、ミミツブレのいわれについては不明です。

柴岡 弘郎(JSPPサイエンスアドバイザー)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2009-10-26