質問者:
教員
クラ口
登録番号2082
登録日:2009-09-28
私は高校で生物の教員をしているのですが,先日,ある問題集で次のような問題を見かけました。みんなのひろば
気孔開閉前後の孔辺細胞の浸透圧は?
問.気孔が開いているときの孔辺細胞の特徴を正しく説明した文章を選べ。
①気孔が閉じているときより,浸透圧が高くなっている。
②気孔が閉じているときより,浸透圧が低くなっている。
③気孔が閉じているときと浸透圧はほぼ等しい。
この問いに対する解答は②で,解説には「気孔が開いている場合,孔辺細胞は吸水した状態にあり,閉じているときよりも浸透圧は低下している。」とありました。
この現象が単に,水(溶媒)の移動のみによって引き起こされるのであれば,この解説は正しいと思うのですが,気孔が開くときには,カリウムイオン(いわば,溶質にあたるようなもの)も移動しますよね。
そこで質問なのですが,気孔の開閉前後での孔辺細胞の浸透圧を比較すると実際にはどのようになっているのでしょうか?
もう少し具体的にいうと,気孔の開く過程
①閉じている状態
↓ 青色光
②カリウムイオンの流入
↓
③孔辺細胞の浸透圧上昇
↓
④水の流入
↓
⑤膨圧の上昇による孔辺細胞の変形(開いている状態)
において,④の水の流入が停止したときに⑤の浸透圧は,①よりも低張になっているのか?それとも,高張なのか,等張なのか?ということです。
いろいろと調べてみたのですが,なかなか見あたりませんので,ご教示いただけないでしょうか。お手数をおかけいたしますが,よろしくお願いいたします。
クラ口様
日本植物生理学会「みんなの広場質問コーナー」をご利用頂きどうも有り難うございました。ご質問は気孔開閉制御機構研究の第一人者である、九州大学理学研究院の島崎研一郎先生にお願いして、以下の様な回答を頂きました。
前半のご質問に対して:
まず、問題集の答えは間違いだと思います。水は確かに多く吸収されていますが、それ以上に吸水するに足るだけのカリウムの蓄積が必要です。つまり、より高い浸透圧で吸水力を上げる事により、はじめて高い膨圧が維持され気孔を開いたままにすることができます。
文献のデータを示しておきます。直接の答えにはなりませんが、密接に関連しています。
気孔開度(マイクロメータ) 5-10 10-15 15-20
気孔開口に必要な浸透圧 0.20 0.31 0.44
(MPa/マイクロメータ)
つまり、気孔を大きく開けば開くほど1マイクロメーターを開くのにより大きい浸透圧が必要になります。
(p.95, Table 4.1, In "Stomata" second edition by Willmer and Fricker 1996)
後半のご質問に対して:
浸透圧は高くなっています(高張です)。それによって高い膨圧を維持でき、気孔を開いたままに保つことができると考えられます。
島崎 研一郎(九州大学理学研究院)
日本植物生理学会「みんなの広場質問コーナー」をご利用頂きどうも有り難うございました。ご質問は気孔開閉制御機構研究の第一人者である、九州大学理学研究院の島崎研一郎先生にお願いして、以下の様な回答を頂きました。
前半のご質問に対して:
まず、問題集の答えは間違いだと思います。水は確かに多く吸収されていますが、それ以上に吸水するに足るだけのカリウムの蓄積が必要です。つまり、より高い浸透圧で吸水力を上げる事により、はじめて高い膨圧が維持され気孔を開いたままにすることができます。
文献のデータを示しておきます。直接の答えにはなりませんが、密接に関連しています。
気孔開度(マイクロメータ) 5-10 10-15 15-20
気孔開口に必要な浸透圧 0.20 0.31 0.44
(MPa/マイクロメータ)
つまり、気孔を大きく開けば開くほど1マイクロメーターを開くのにより大きい浸透圧が必要になります。
(p.95, Table 4.1, In "Stomata" second edition by Willmer and Fricker 1996)
後半のご質問に対して:
浸透圧は高くなっています(高張です)。それによって高い膨圧を維持でき、気孔を開いたままに保つことができると考えられます。
島崎 研一郎(九州大学理学研究院)
日本植物生理学会広報委員長
徳富 哲
回答日:2009-09-30
徳富 哲
回答日:2009-09-30