一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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サンセベリアの花

質問者:   一般   美佳
登録番号2083   登録日:2009-09-28
10年位前からサンセベリアを育てています。毎年、何度も花が咲き大量の蜜が溢れて、夜になると濃厚な香りを放ちます。いろいろなことが気になってインターネットや書店でも調べてみるのですが園芸関係の本ばかりで専門書はどういった分類の本に書かれているのかさえ良くわかりません。そこで質問なのですが、

1.花を咲かせるのは上手に育てているからと園芸センターで何年も前に言われたのですが、そもそも生命の危機的状況や殖えるために花を咲かせるのではないのでしょうか?

2.挿し木や株分けで殖えることはわかったのですが、では労力を使ってわざわざ花を咲かせる生存に有利な理由はどういったものなのでしょうか?

3.種が取れたことはありませんが種はなるのでしょうか?

4.花自体は咲くとしばらく咲いたままで香るのは夜ですが、これは夜になると香気成分が分泌されるということでしょうか?(何故夜だけ香るのでしょうか)

5.花の甘い香りはなんという成分なのでしょうか?チューベローズなどのリュウゼツラン属と同じでしょうか?

6.この蜜の成分はどういったものでしょうか。なめても大丈夫ですか?

ずっと気になっています。こんな質問なのですが…どうぞよろしくお願いします。
美佳様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。特定の植物の栽培などに関する質問には通常お答えできないのですが、今回のご質問には一般的な疑問が含まれていますので、説明いたします。

サンセベリアと言われている植物はリュウゼツラン科に属するもので、多くの種類が園芸的にも栽培されている様です。美佳様が栽培されているのは多分
日本で一般的なS. trifasciata (アツバチトセラン)かと思いますので、そのつもりで話を進めます。

1.の回答
おっしゃるように、植物が花を咲かせるのは繁殖が目的です。花はどういう時に咲くかということは一義的に決まっている訳ではなく、種によって様々です。現在自然界で生育している植物は、どれも長い進化の過程の中でそれぞれの生存戦略を獲得してきたものです。生存戦略とは個体がまともに成長して、子孫を増やす事ができる手段のことです。したがって、種がどんな環境のなかで形成されてきたかで、その手段も様々です。ただ、園芸品種は人間がいわば加工したものですから、条件さへよければいつでも花を咲かせる植物もあり得る訳です。この問題については分かり易い啓蒙書がありますので、それをぜひ読んで下さい。
日本植物生理学会監修•西村尚子著「花はなぜ咲くの?」(植物まるかじり叢書3)化学同人、2008年(¥1200).
なお、同叢書の他の本(1〜5)にも関連する事を書いたものがありますので、参考にして下さい。

2.の回答
植物が増殖する手段には二つあります。一つは種子を形成して散布することと、もう一つは栄養増殖と呼ばれる方法で、身体の一部から直接個体をつくるやり方です。ほとんどの植物はどちらの方法でも増殖できます。子孫を増やすには、たった一種類の手段しかないよりは、複数の手段があったほうが戦略としてはすぐれていますね。植物がどちらの手段を基本的に使っているかは種によって異なります。いずれにしろ、それぞれの植物種にとって、生育する環境に最も適した手段を使っていると言えるのではないでしょうか。二つの手段で大きく異なる点は、栄養増殖は基本的にクローンによる増殖ですが、種子による増殖の際は、遺伝子の組み換えが起きている事です。多様性に富んだ個体が多くできるためには種子による増殖の方が有利です。栄養増殖では、例えばある個体が突然変異を起したとします。たまたまそれが生存に有利なものであっても、クローンによる増殖では極めて限定的になります。
他方、種子でしか増殖できないとしたら、花が咲かず、また咲いても種子ができなかったときは子孫を残す事ができません。種子をつくる植物でも、自家
受粉をするものでは、クローンのような子孫ができることになりますが、そのようなクローン化をさけるために、自家不和合によって積極的に遺伝子の組み換えの機会を多くしている植物も多いのです。
(自家不和合については質問コーナー登録番号0513, 登録番号0833を参照下さい。)

3.の回答
種子(生物学では種子といいます。)ができるためには、受粉が起きないといけません。花が咲けば自動的に種子が出来るのは自家受粉の場合か、あるいは風で花粉が飛んで受粉する場合(風媒花)です。多くの場合昆虫などのポリネーター(pollinator)が必要です。サイセベリアの花は虫媒花で、ポリネーターは娥の一種だろうと思います。
本来日本に生育している植物ではありませんので、自然界でのポリネーターはいないと思います。人工受粉をしてやれば種子が出来るかもしれません。やってみてはいかがですか。保証はできませんが。

4.の回答
そのとおりです。したがって、夜行性の娥のような昆虫がポリネーターとなっているのです。香気昆虫を誘引するために分泌します。

5.の回答
Sansevieria の仲間の香気成分は香水に利用されているようですので、分析した研究もあるかと思いますが、私にはわかりません。ただ、香気成分は単一のもではなく数十種類の化合物が混じったものです。ほとんどが、エステル、アルコール、アルデヒド系の化合物で、その種類割合は種によって異なります。S.trifasciata では69種類の化合物が検出されたという報告があるようです。

6.の回答
植物の蜜(nectar) は糖です。正確な成分は知りません。S.trifasciataの蜜はなめると甘く脂っこいtexture のようです。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2009-10-08
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