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植物の色素について

質問者:   高校生   おたね
登録番号2093   登録日:2009-10-14
色素について2つ質問です。以前、葉緑素の合成には光が必要だが、カロチノイドは光がなくても合成されると教えてもらいました。つまり緑色にならないようにするには光にあてなければ良いことになります。ではカロチノイドを合成させないようにするにはどうすれば良いでしょうか?温度とか酸素濃度、二酸化炭素濃度などを制御すると可能でしょうか。もうひとつは紫色の菊の花の色素です。紫外線(UV-A)を照射するとポリフェノールが合成されて色が濃くなると聞きました。しかし照射し続けたら逆に白っぽくなったという例もあるようです。長い間照射しすぎたため、徐々に色が濃くなったのに、逆に色素が破壊され徐々に白くなったと考えてよいのでしょうか。見た目の色は白くなっても、色素が増えているということもありえるのでしょうか。面白いので私も色を濃くする実験をしたいのですが、どの程度の紫外線の強さでどの程度の期間照射するとよいと思われますか。菊の種類にもよると思いますが教えてください。
おたね さま

 第一のご質問ですが、クロロフィルの合成には光が必要であり、暗所で種子をまいて育てるとめばえは緑色になりませんが、カロチノイドの合成には光を必要としないため、めばえは黄色になります(質問登録番号2072への回答)。カロチノイドは少なくとも10段階以上の反応を経て合成されますが、どの反応段階も光を必要としません。ご質問にある温度、酸素、二酸化炭素の内、酸素をなくすればカロチノイド合成に必要なATPが細胞内で呼吸によって生産できないためカロチノイドが合成できなくなるでしょう。さらに、めばえの成長に必要なATPも生産できなくなるので、めばえも成長できないでしょう。現在までのところ、カロチノイドの合成を環境要因の制御だけで抑える方法は見つけられていません。カロチノイド生合成に関与する酵素が欠けた変異種が研究されていますが、これらを光の下で育てためばえの葉緑体はクロロフィルを合成できますが、カロチノイドは合成できません。カロチノイドは葉緑体で光によって生ずる活性酸素を消す役割をもっているため、カロチノイドを合成できない変異種の葉緑体は、光合成の間、活性酸素を消すことができず、葉緑体は活性酸素によって酸化障害を受けるため、めばえは成長できません。


第二のご質問はお答えするのが難しい問題です。紫外線(UV)は、波長の短い400 nm(青紫色)から100 nmまでの光を指しますが、波長の順にUV-A (400 ~ 320 nm), UV-B(320 ~ 280 nm), UV-C(280 ~ 100 nm)とよんでいます。紫外線はヒトの眼には見えませんが、鳥類、チョウなどの昆虫の眼は紫外線も見ることができ、そのため(ヒトには見えない)400 nm以下の波長の光を吸収する色素を見ることができます。地球に届く太陽光にはUV-A, UV-Bは含まれていますが、波長が短く、紫外線エネルギーの高い、細胞成分を分解するUV-Cはオゾン層によって吸収され、地表にはほとんど届きません。しかし、フレオン・ガスなどによる、特に南極でみられる顕著なオゾン層の破壊―オゾンホール―によってUV-Bが地表に届く量が増え、ヒトを含め生物障害が心配されています。

太陽光の内、UV-A, UV-Bは地表に届くため、植物はこれらの紫外線によって障害を受けないようにいろんな方法で対処しています。紫外線は光合成には利用できず、逆に光合成を阻害し、葉緑体に障害を与えます。紫外線のこのような障害を抑えるため、植物は葉の表皮細胞に紫外線をよく吸収するフラボノイド(特にUV-A, UV-Bをよく吸収するフラボン、フラボノ―ル)を合成し、太陽光の紫外線が葉緑体などに吸収されないようにしています。フラボノイドを合成できない変異種は紫外線に弱く、太陽光の下では生育が抑えられますが、紫外線を遮蔽すれば生育できます。

さて、太陽光で育てたキクは紫外線(UV-A, UV-B)にさらされてきたので、フラボノイドを合成して紫外線障害を防いでいると思われますが、さらに、紫外線を照射すればどうなるかは、実験してみないとわかりません。まず、最初にUV-Aを太陽光の2倍量、3倍量-------と照射して見るのが最初の実験でしょう。ヒトの眼に見える色素の変化はなく、紫外光を吸収する色素が合成されるかも知れません。紫外線はヒトの皮膚、眼などに危険であることにくれぐれも注意し、また、紫外線の光源の選択、そのエネルギー測定には、指導者について実験して下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二 
回答日:2009-10-19
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