一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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玉型メセンの腐敗について

質問者:   一般   ぷにぷに
登録番号2094   登録日:2009-10-18
初めまして。私は趣味で多肉植物やサボテンを育てています。多肉植物の中でも特にリトープスやコノフィツムなど「玉型メセン」と呼ばれるグループは低温乾燥に強い反面、高温多湿に非常に弱くすぐに溶けて死んでしまいます。他の多肉植物やサボテンと比べても、その溶けやすさや栽培の難しさはダントツです。園芸専門店でもよく溶かしている店を見かけます。

そこで質問です。
玉型メセン(特にリトープス)はなぜ他の多肉植物やサボテンと比べて非常に溶けやすいのか?その生理学的な原因や仕組み、対処法などをお教えください。

マニアックな植物のためか、書店に行っても専門書のような物が全く見当たりません。ネット上でも体系化された情報は少なく、個人の体験談や噂話などが飛び交っている状況です。
ぷにぷに 様

日本植物生理学会みんなの広場質問コーナーをご利用頂きどうも有り難うございました。回答が遅れましたことをお詫び致します。お送り頂きました「玉型メセンの腐敗について」に関するご質問ですが、当学会に適当な方がおられなかったので、大阪府立大学名誉教授、東京カクタスクラブ顧問の井上直久先生に回答をお願いし、以下の回答を頂きました。回答は井上先生の[原因」に関する考察と、国際多肉植物協会に問い合わせて得られた「対処法」の二つからなっています。


[井上直久先生からの回答]

国際多肉植物協会(ホームページはhttp://www.ne.jp/asahi/isij/japan/)の広報担当の方から回答を貰いました。
なぜ溶けやすいかについて直接の答えにはなっていず、対処法に重点が置かれているようなので、「原因を生理学的に」という視点で少し考えてみました。

(1)サボテンも多肉植物も、ほかの植物に比べて腐りやすい。液胞に水をためていて、含水率が高い。サボテンの中でも、大型で木質部があって、表皮が堅くて厚い種類は、一般に丈夫で、反対に小型で、しかも表皮が薄くて体が柔かい種類は腐りやすい。

(2)玉型メセン(特にリトープス)は、他のサボテンや多肉植物が根や茎に丈夫な木質部を持っているのに対し、「軟質な部分ばかり」なので、腐敗菌が入ると一気に広がってしまう。特に腐れの発端になりやすいと思われる根際に木質部が無く、表皮は薄くつるつるでむき出しである。
(3)玉型メセン(特にリトープス)は、他のサボテンや多肉植物が表皮に厚いクチクラ層を持っているのに対しているのに対して、表皮が薄く腐敗菌などの侵入に対して防御が弱い。

(4)休眠期が長く、毎年脱皮して中から新しい芽(双葉)が出て大きくなるというサイクルをもつ。このことが、休眠期に当たる高温多湿な夏に特に溶けやすいことと関係していると思われるが、詳しくは分からない。


[国際多肉植物協会からの回答]


「玉型メセン(特にリトープス)はなぜ他の多肉植物やサボテンと比べて非常に溶けやすいのか?」という質問ですが、 溶けやすいとのご指摘でしたが、質問内容のとおり高温多湿に弱い、すなわち蒸れやすい植物です。反面、大変高度に多肉化した植物なので、一度水を蓄えると長期間の乾燥に耐えることができる、乾燥に非常に強い植物です。

南アフリカの自生地は昼間は暑く、夜は寒く、気温の寒暖差が大きいので、日本では夜間も温度が下がらない真夏の熱帯夜ような蒸し暑さがリトープスにとって一番の苦手です。この時期に水をあげてしまって枯らす方が多いのはこのためです。

6月から9月にかけて完全に水をきって休眠させ、9月に入って涼しくなってから水やりを始めます。それでも日中にあげると鉢内が蒸して腐敗の原因につながるので、水は夜間にあげるそうです。

湿度の多い日本では乾燥している自生地にくらべ、土などに腐敗菌が繁殖しやすい環境であるのも枯れる原因のひとつのようです。

用土は肥料分が少なく、清潔で さっと水のぬけるような水はけのよい土がいいとされています。


国際多肉植物協会/井上直久
         (大阪府立大学名誉教授、東京カクタスクラブ顧問)
日本植物生理学会広報委員長
徳富 哲
回答日:2009-11-25