一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物の色について

質問者:   高校生   へい
登録番号2096   登録日:2009-10-19
庭に紫蘇が生えています。

赤紫蘇と青紫蘇の両方が植えてあります。紫蘇の赤い色はアントシアニンという色素だと思うのですが、青紫蘇の方も葉の裏が赤くなっています。赤紫蘇の方は夏の前は若干緑色をしていました。

これはなぜなのでしょうか?

青紫蘇と赤紫蘇は天気などによって色が付いたり付かなかったりするのでしょうか?
どちらの色の時の方が元気な状態なのでしょうか?


教えてください。
へい さま

 紫蘇(シソ)はご質問のように赤ジソと青ジソの品種がありますが、赤ジソはアントシアニン含量が高く、アントシアニンが酸性でより赤くなることを利用して梅を漬けるのに用いられ、青ジソは主にそのまま料理に用いられています。赤ジソも青ジソも共に葉の葉肉細胞には(緑色の)葉緑体をもっていますが、赤ジソはアントシアニン含量が高く、葉緑体の色が赤いアントシアニンにマスクされて緑色が見えないため赤くみえます。赤ジソも青ジソと同じように葉緑体で進行する光合成によって成長しますが、赤ジソでも葉緑体にはアントシアニンは含まれていません。アントシアニンは細胞内では主に液胞に局在し、そのためアントシアニンは葉緑体で進行する光合成に、直接、関与していません。

 アントシアニンは、現在、次のような役割をもっていると考えられています。光合成には直接、関与しませんが、アントシアニンは光合成に有効な太陽光を吸収するため、これを合成することによって葉緑体に太陽光があまり照射されないようにしていると考えられています。葉緑体にCO2固定能力以上の強い光が照射されると、余分の光は葉緑体で活性酸素を生ずるように働き、活性酸素によって葉緑体の光合成機能が破壊されやすくなります。それを防ぐためアントシアニンを合成して太陽光を遮り、葉緑体にあまり太陽光が当たらないようにしています。ご質問にあるように、庭の赤ジソでも夏になる前、太陽光照度があまり高くない間は緑色であったことはこのように考えると説明できます。

一方、アントシアニンをあまり合成しない青ジソは夏の強い太陽光にさらされても、余り活性酸素が葉緑体で生じない、または、生じた活性酸素を速やかに、直ちに消去できる機能の高い葉緑体をもち、夏の太陽光でも障害を受けることなく光合成ができると考えられます。ご質問の青ジソの葉の裏側が赤くなる理由は分かりませんが、赤ジソに比べるとその濃さはどうでしたでしょうか?

林の中のような太陽光照度の低い所で出現した赤ジソ、青ジソの共通祖先のシソの内、1)アントシアニンの合成量を増加させて高照度の太陽光を直接に浴びても葉緑体にあまり光が当たらないように進化したのが赤ジソであり、一方、2)高照度の太陽光を直接に受けて葉緑体に活性酸素ができても、光合成機能にあまり障害を受けないように進化したのが青ジソと考えられます。

 
 バラの新芽などで葉が赤くなるのはアントシアニンがたくさん合成されるためですが、これもアントシアニンによって葉緑体を強すぎる太陽光から守るためと考えられています。これについて、登録番号2053への回答を見てください。
赤ジソと青ジソと同じようにアントシアニン含量の異なる品種がユキノシタにもあり、これについて本質問コーナーの登録番号1601に対する回答に参考書籍も含めて詳しい解説がありますので、ご覧下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二 
回答日:2012-07-20