一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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アントシアニンの合成と光について

質問者:   高校生   おたね
登録番号2097   登録日:2009-10-21
紫外線を受けると植物はアントシアニンを合成します。しかし資料や実験からアントシアニンは青と赤の光を照射しても合成できることがわかりました。青を感じる受容体は紫外線と同じということで青でも合成できることは想像できましたが、赤は受容体が違うはずです。どうして赤色光でもアントシアニンが合成できるのですか?教えてください。
おたね樣

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。おたねさんは本コーナーの常連のようですが、私の担当は初めてですね。さて、今回の以下のご質問にお答えします。すでに過去の質問や資料でかなり勉強されていると思いますので、基礎的な事ははぶきます。
 
アントシアニン合成に関わる光は紫外線(UVB:320-280nm)、青色光(BL)および赤(R)― 遠赤色光(FR)が知られています。これらの波長に対する植物の感受性は種によって異なります。したがって、一概にどの波長が有効かと断定する事はできません。FR,R,BL UVが全て有効な場合もありますし、R,BL, UVが有効な場合、FRは無効な場合またBL, UVだけが有効な場合など。なぜ、植物によってそんなに違うのかというと、それは植物が進化し、地球上での生育分布が確定し、生育環境に適応した生活形態と取るに至った過去の進化的歴史を背負っているという事でしょう。動物でも、脊椎動物だけをとっても全く多種多様で、それぞれが特異な性質をもっています。植物というと花の咲くものはひっくるめて一緒に考えがちですが、やはりそれぞれが大きく違った特性を備えています。特に環境への対応は一様ではありません。だからある植物はAなのに、別の植物ではBだということは当たり前のことでと思って下さい。
ところで、UVB-BLに関係する光受容体はクリプトクロム、R-FRに関係する受容体はフィトクロムです。それぞれの受容体ににいては過去の質問への回答を参考にして下さい。これらの受容体によって受け取られたそれぞれの波長の光の信号は、細胞内で別の化学的信号に変えられて、アントシアニン合成に関わる酵素タンパク質の遺伝子の発現をもたらします。ある植物ではUVBだけで十分にその発現が可能でしょうし、別の植物ではUVBが十分に有効となるためにはRの関与が必要です。研究されている例では、RはUVB/BLの効果を高めるように相互作用しているようです。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2009-10-26
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