一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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光合成速度と外部環境の関係性

質問者:   高校生   なお
登録番号2098   登録日:2009-10-25
今回初めて質問させてもらいます。

自由研究をやっていった中で、疑問に思ったのですが、光合成速度と外部環境の関係性って、どういうものなのでしょうか?
光の量や色、水温の変化により、光合成速度にはどのように影響してくるのでしょうか?
自分でもネットや本などを使って調べてはいるのですが、よくわかりません。

教えてください。
なお さま

光合成生物には、光合成細菌、藻類、陸上植物があり、それぞれの光合成生物はそれぞれに最も適した地球上の環境に棲み分けています。光合成生物はCO2を太陽光エネルギーによって固定し有機物を合成できますが、これが最も進行しやすい多くの環境要因の組み合わせが満たされていることが、それぞれの光合成生物の生育のために必要です。
光合成生物の生育、光合成の進行にとってCO2の他に少なくとも14種類の無機養分が海水、川の水、土壌に適当な割合で含まれていることが必要です。元素記号で示すとN, K, Ca, Mg, P, S, Cl, B, Fe, Mn, Zn, Cu, Mo, Ni ですが、この他にNa, Se, Si, Coが必要な場合もあります。農業ではこれらが欠乏すると、肥料の形で補うことが生産量の確保のために補うことが必要です。この他に、陸上植物にとっては水の供給が光合成にとって欠かすことのできない環境要因であり、陸地での植物の分布は降雨量によって制限されます。水の供給が充分であれば、葉の気孔が開きCO2を葉の細胞内に取り込むことができますが、水が供給されないとき、葉の水を蒸散作用で失わないように気孔を閉じるためCO2を取り込むことができず、光合成量が低くなります。

 CO2濃度、O2濃度、光の照度、光の波長、温度、水の供給などが光合成に直接、関与する環境要因です。これら光合成環境要因の光合成速度に対する影響を見るためには、例えば、CO2濃度の影響を見る場合であれば、他の環境要因を最も適当な条件にし(または飽和条件、例えば、光の照度を高くして)、CO2濃度を変えてそれぞれのCO2濃度でのCO2固定量を測定します。こうしてCO2固定量が最大になるCO2濃度がその光合成生物について飽和濃度になります。次いで、CO2飽和濃度の条件で光の照度を変えてCO2固定量を測定し、それが最大になる光の照度が飽和光照度となります。

この様にして光合成の環境要因の濃度や照度を変えることによってCO2固定量が最大となる飽和環境条件を決めることができます。これらの環境要因の飽和濃度、照度やそれを測定するときに得られた、各濃度、照度でのCO2固定曲線から、実験に用いた光合成生物のCO2固定様式(C3, C4タイプ)、光呼吸の有無などを推定することができます。実際のデーターについては植物生理学の教科書、例えば、桜井ら:植物生理学概論(2008)、培風館、などをご覧下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2009-11-04
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