一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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クズと共生関係を結ぶ根粒菌は、どこの土にでもいますか

質問者:   大学生   てりじ
登録番号2102   登録日:2009-10-30
自分なりに調べても見つからなかったので質問させていただきます。けれど、大学生ならばこれくらい調べられるはずだと思われましたら、どうぞ無視してください。

つる植物を卒業研究のテーマにしました。研究室の先生は専門がシダですし、先輩たちも高山植物・シダの県内分布・スゲ・帰化植物の分布などをテーマにしているので、つる植物に関してはまず自分で調べようかと思っています。
最近、雑学を集めたような本で、クズにも根粒菌が共生していると知りました。
「マメ科植物は、それぞれの植物種毎に相手となる根粒菌が基本的に違います。それは相手を認識する化学物質の構造が異なるためです」(1)ということで、クズにも特定の相手がいると思うのですが、山にも河原にも線路沿いにもいます。ということは、どこの土壌にでもいるような細菌なのでしょうか。大学の図書館で共生に関する本を見ても、代表的な植物はレンゲ・エンドウ・ダイズで、クズのことは触れられていません。逆に、クズをキーワードに調べても今のところ根粒菌がいるということしか出てきません。0600の回答にありましたように、土を滅菌するのもおもしろいと思います。
ランと細菌の関係のように、1対1ではないのでしょうか?どこにでもいるクズの相手となる細菌は特定されていますか?

(1)農林水産省ホームページ
てりじ さん:

お待たせしました。回答をお願いした先生が何人かたいへんお忙しかったので、少しばかり遅れました。回答は根粒菌共生をご専門に研究されている鹿児島大学の阿部美紀子先生にお願いしました。いくつか関連資料も添えられていますので、さらにお調べになる手がかりにしてください。


@@@クズが生えているところなら、必ずいるはずです。実物をご覧になったことがあればおわかりと思いますが、クズは崖の崩土地や、荒れ地など,痩せ地にどんどん蔓を伸ばしてはびこります。葉が広いので、光合成は盛んにやっていると思いますが、植物の栄養にはそれだけでは足りません。特に窒素分の補給には、根粒中の根粒菌が行う窒素固定が欠かせないでしょう。

ただ、ご質問の、根粒菌が特定されているかという点は、少なくとも、公表されているものはないようです。私たちもクズの根粒から菌を分離したことはありますが、系統解析、宿主特異性の解析等には手をつけていません。基本的に,根粒菌には宿主特異性があり、感染して根粒を作ることの出来る根粒菌と宿主植物の関係は厳密に決まっていると言われています。しかし、近年、熱帯性のマメ科灌木や,マメ科樹木に共生する細菌は、根粒菌とは限らず、種々の共生菌が報告されるようになりました。共生窒素固定にまつわる研究は、これからもいろいろな新知見が発表されていくと思います。ますます目の離せない世界です。

クズに関する資料として参考になりそうなサイトをいくつかご紹介します。

https://www.researchgate.net/publication/6758471_Primary_study_on_acid_tolerance_mechanism_of_a_wild_aciduric_Rhizobium_strain_isolated_from_Pueraria_lobata
http://cat.inist.fr/?aModele=afficheN&cpsidt=2922518
http://www.idosi.org/bri/2(2)09/11.pdf

阿部 美紀子(鹿児島大学理工学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2009-11-25