質問者:
一般
やまだ
登録番号2107
登録日:2009-11-06
先日、NHKでちらっと見たのですが生ゴミの入った袋に柿の皮を入れて柿の消臭成分
揉むと生ゴミの臭いが消えるというのです。
柿の皮に消臭する成分が含まれているのでしょうか?
私も試しに実験してみましたが、消臭効果はあるように感じます。
柿のシーズンは良いですが、柿が手に入らないシーズンは
どうしたら良いものかと考えています。
たとえば、柿の皮から消臭成分を取り出し、保管しておき必要な時に使うなど
個人でも出来るような方法はあるでしょうか?
ご教授頂ければ幸いです。宜しくお願いします。
やまだ さま
生ゴミの臭いの揮発性成分が何であるかは生ゴミの種類などで異なると思いますが、この臭いは生ゴミが主として微生物によって分解された時に生じる、ヒトにとって不快な一群の揮発性成分と考えてよいでしょう。生ごみに含まれる生物由来の細胞膜やオルガネラに必ず含まれている脂質、特に不飽和脂質が、微生物によって分解されるとき、これらが活性酸素によって酸化分解されて過酸化脂質を経てカルボニル(アルデヒド)が生じ、ヒトにとって不快な揮発性成分になると考えられます。過酸化脂質に由来する揮発性成分の内でも、とくに4-hydroxynonenal (HNE)、4-hydroxyhexenal (HHE)はヒトにとって不快な臭い(加齢臭ともよばれています)をもっています。また、生ゴミの中に必ず含まれている肉や魚の蛋白質が分解して生ずるアミン系の分子も、不快な臭いをもつ揮発成分です。
植物が生育に不適当な環境条件、水ストレス、温度ストレス、強光ストレスなどにさらされると、活性酸素が生じやすくなり、細胞の不飽和脂質が酸化され、HNE, HHEが発生すると考えられています。山口大学・総合科学実験センターの真野 純一 先生は、植物の葉に障害を与えるHNE, HHEを還元し、その毒性を低下させる酵素(アルケナール・レダクターゼ)を発見しておられます。さらに、実際にこの酵素が植物でストレス環境の下で生ずる、HNEなどの毒性を防ぐ上で機能していることが明らかになっています。
ご質問の柿の果実の皮にもHNE, HHEを還元する酵素は含まれていると考えられます。従って、生ゴミから発生したHNE, HHEが柿の皮に吸収され、柿の皮に含まれているHNE, HHEを還元する酵素によって還元され、消臭されている可能性はあると思はれます。しかし、柿の皮の酵素は皮の細胞が生きている間はHNE, HHEを還元、消臭する活性をもっていますが、ゴミの中で柿の皮の細胞が壊れてしまうとこの酵素も分解されてしまうでしょう。そのため、消臭効果もなくなるので、柿の皮のこの機構による消臭は柿の果実が手に入る間に限られることになります。
柿の果実に多い成分としてタンニンがあり、柿渋として広く利用されています。植物に含まれているタンニンの合成やその植物での役割については、本質問コーナーでもたびたび議論されています(質問登録番号1109,登録番号1152,登録番号1184,登録番号1476,登録番号2105に対する回答を参照)。タンニンは皮なめしに使われていることからも推定されるようにタンパク質のアミノ基と強く結合する性質をもっていますが、この性質によって植物は昆虫や動物によって食べられるのを、また、微生物によって分解されるのを防いでいると考えられています。タンニンはアミノ基と反応しやすいため、蛋白質の分解で生ずるアミン系の分子と結合しやすいと考えられます。柿の皮を乾燥してもタンニンは分解しないので、それでも脱臭効果がみられるならば、柿の皮を乾燥、保存しておけば、いつでもアミン系の分子による臭いを取り除くのに使えるでしょう。
生ゴミの臭いの揮発性成分が何であるかは生ゴミの種類などで異なると思いますが、この臭いは生ゴミが主として微生物によって分解された時に生じる、ヒトにとって不快な一群の揮発性成分と考えてよいでしょう。生ごみに含まれる生物由来の細胞膜やオルガネラに必ず含まれている脂質、特に不飽和脂質が、微生物によって分解されるとき、これらが活性酸素によって酸化分解されて過酸化脂質を経てカルボニル(アルデヒド)が生じ、ヒトにとって不快な揮発性成分になると考えられます。過酸化脂質に由来する揮発性成分の内でも、とくに4-hydroxynonenal (HNE)、4-hydroxyhexenal (HHE)はヒトにとって不快な臭い(加齢臭ともよばれています)をもっています。また、生ゴミの中に必ず含まれている肉や魚の蛋白質が分解して生ずるアミン系の分子も、不快な臭いをもつ揮発成分です。
植物が生育に不適当な環境条件、水ストレス、温度ストレス、強光ストレスなどにさらされると、活性酸素が生じやすくなり、細胞の不飽和脂質が酸化され、HNE, HHEが発生すると考えられています。山口大学・総合科学実験センターの真野 純一 先生は、植物の葉に障害を与えるHNE, HHEを還元し、その毒性を低下させる酵素(アルケナール・レダクターゼ)を発見しておられます。さらに、実際にこの酵素が植物でストレス環境の下で生ずる、HNEなどの毒性を防ぐ上で機能していることが明らかになっています。
ご質問の柿の果実の皮にもHNE, HHEを還元する酵素は含まれていると考えられます。従って、生ゴミから発生したHNE, HHEが柿の皮に吸収され、柿の皮に含まれているHNE, HHEを還元する酵素によって還元され、消臭されている可能性はあると思はれます。しかし、柿の皮の酵素は皮の細胞が生きている間はHNE, HHEを還元、消臭する活性をもっていますが、ゴミの中で柿の皮の細胞が壊れてしまうとこの酵素も分解されてしまうでしょう。そのため、消臭効果もなくなるので、柿の皮のこの機構による消臭は柿の果実が手に入る間に限られることになります。
柿の果実に多い成分としてタンニンがあり、柿渋として広く利用されています。植物に含まれているタンニンの合成やその植物での役割については、本質問コーナーでもたびたび議論されています(質問登録番号1109,登録番号1152,登録番号1184,登録番号1476,登録番号2105に対する回答を参照)。タンニンは皮なめしに使われていることからも推定されるようにタンパク質のアミノ基と強く結合する性質をもっていますが、この性質によって植物は昆虫や動物によって食べられるのを、また、微生物によって分解されるのを防いでいると考えられています。タンニンはアミノ基と反応しやすいため、蛋白質の分解で生ずるアミン系の分子と結合しやすいと考えられます。柿の皮を乾燥してもタンニンは分解しないので、それでも脱臭効果がみられるならば、柿の皮を乾燥、保存しておけば、いつでもアミン系の分子による臭いを取り除くのに使えるでしょう。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2009-11-16
浅田 浩二
回答日:2009-11-16