一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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エマーソンの実験とその結果について

質問者:   高校生   kelvin
登録番号2116   登録日:2009-11-26
エマーソンは、短波長、長波長の赤色光を緑色植物に照射し、光合成速度を測定するという実験を行いました。結果は、それぞれの波長の光だけを照射すると、光合成速度は遅く、同時に照射すると、光合成速度は速くなることから、「光化学反応には2つの反応過程があり、それぞれが異なる波長の赤色光を吸収していることがわかった。また、この2つの反応過程は連続して進行すると考えられた。」と、第一学習社の高等学校 改訂 生物2の教科書に記載されています。

一つ目の質問は、長波長と短波長の光を同時に発することで、光は重ね合わせの原理により、合成波となってしまい、前者(それぞれの波長の光を単独で当てた)の時と違う光化学反応が起きた為、光合成速度は速くなったとは考えられないのでしょうか。
エマーソンは、1つの漠然とした光化学反応から、この実験だけで2つの光化学系にわけられることを発見したのですか。

二つ目の質問は、前述した通り、「光化学反応には、2つの反応過程があり・・・わかった」ということは、これは、2つの反応過程が存在する事がわかっただけであり、逆に、この実験だけで、光化学系2,1の2つの反応過程を示す証明になるのでしょうか。

よろしくお願いします。
Kelvin さん


本コーナーに質問をありがとうございます。


教科書の記述には幾分わかりにくい点がありますので、まず、エマーソンらが行った実験について説明させていただきます。

エマーソンらの実験は大別して次の二つに分けられます。両方の実験とも、緑藻クロレラを材料に、特定の波長の光(単色光)を用いて行っています。

<実験1>

(方法)単色光を照射して、吸収された光(光量子)当たりの光合成量(酸素の発生などで量る)を波長ごとに求める(光量子当たりの光合成量を、ここでは“収率”と呼ぶ)。

(結果)光がよく吸収される波長領域でも光量子当たりの光合成量(“収率”)が低いところがある。例えば、680ナノメーター(ミリミクロンとも呼ぶ)より長波長の赤色光領域がそれに当たる。

<実験2>

(方法)<実験1>で“収率”の低い波長領域の光と他の波長領域の光を、それぞれ単独または同時に照射して光合成速度を比較する(2波長照射)。

(結果)2波長照射の場合の光合成速度は、それぞれ単独の波長の光を照射した場合に得られる速度の和よりも大きくなる(2波長照射で“相乗効果”がある)。


<一つ目の質問への回答>

この実験に用いた光の強さの範囲では、二つの波長の光を同時に照射しても色素分子が同時に二つの光量子を吸収することは起こり得ない。“光混合”や“2光量子吸収”のようなことは生じないと考えて良いでしょう

<二つ目の質問への回答>

上記の二つの実験から結論されることは、“光合成には二つの光化学反応が関与している可能性がある”ことだけです。二つの光化学反応が関与するにしても、2つの反応過程が連続して進行するのか、同時に進行するのかは分かりません。実際、歴史的にも、この結果が光化学系1、光化学系2の存在に結びつけられたのは別の実験があってのことです(残念ながら、エマーソンの不慮の死の後のことでした)。


本コーナーには“エマーソン効果”についてのQ&Aがありますので、そちらの方もご参考にして下さい。

JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2009-11-27
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