一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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子葉の葉脈について

質問者:   大学生   あき
登録番号2117   登録日:2009-11-26
私は、小学校で理科支援員をしています。
3年生の授業で、ホウセンカの観察の授業を手伝わせてもらいました。そのときに感じた疑問なのですが、子葉の葉脈は、どのようになっているのでしょうか?
すごく不思議に思いました。子葉にある一本線が葉脈なのかな・・と考えているのですが、正しいのでしょうか?
本やネットでは見つけることができなかったので、是非、お忙しいと思いますが、よろしくお願いします。
あき 様

 質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。面白い質問ですね。私も考えた事はありませんでした。でも、子葉はやはり葉ですので、葉脈はあります。ここで、基本的な事を含めて説明しましょう。


 子葉は胚の一部で、多くの種子ではここに栄養分(デンプン、タンパク質、脂質、など)を貯蔵しており、発芽の時にこれらを分解して、生長のために使います。植物の種類によって子葉が地下に留まって地表にでてこないエンドウのようなものもありますが、多くは双葉として(単子葉植物は別です)最初に地表にあらわれます。そして本葉が形成されて十分な光合成活動をおこない、独立栄養機能が確立するまで、貯蔵養分を芽生えに供給します。しかし、中には子葉が大きくなって、地表では本葉と同じように光合成活動を開始するものもあります(アサガオ、キュウリ、ヒマ、等々)。葉からの養分の供給は貯蔵されたものであれ、光合成産物であれ、篩管を通って植物体の各所の輸送(転流)されます。また、子葉の組織の維持や、転流に必要な水は道管を通って子葉に供給されます。これらの管は維管束を形成しています。そして、葉脈は維管束なのです。ということは、葉脈がないと子葉もその役割を果たせない事になります。


 そこで、あきさんが観察されたホウセンカの子葉ですが、私自身は実物を観察した事がないので写真をいくつか調べました。確かに芽生えて直ぐのホウセンカの子葉は真ん中に太い葉脈が走っています。このような中心の葉脈は中肋といいますが、他の植物の子葉の場合でもみられます。葉では、葉脈はこの中肋から次々と枝分かれ的に分化して形成され、網状に広がりますが、子葉の場合は芽生えの最初の養分供給の役割が終われば死にますので、それほど葉脈のネットワークを広げる必要はないわけです。したがって、子葉の葉脈は本葉に比べて比較的単純なのでしょう。役割が早く終わってしまう子葉と、本葉と同じように盛んに光合成活動をする子葉とでは後者の方が葉脈はよく発達しています。ホウセンカもよくみると、子葉の付け根の所から両横に葉脈が出来ているようです。とくに、本葉が出て来た後でははっきりとみえるようですが、確認してみてください。ホウセンカのように比較的肉厚の子葉では分岐した葉脈は表面からは見辛いかもしれません。

JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2009-12-02
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