一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物の方向感覚障害

質問者:   一般   TomaTomo
登録番号2124   登録日:2009-12-19
約80品種のクレマチスを育てています。その中に5年前に入手したメイヤーイサオという品種があり、地植えにして以来、この品種のみに起こる次のような、いとも不思議な現象です。
5〜10本位の蔓が生垣の上部に這い上がり、蕾が出て咲くのを楽しみにしていると、毎年2〜3本は必ずしおれてしまい、枯れてしまいます。蔓同士の絡みあいを避けるために、誘引を行っています。移動しない鉢植えと異なり、方向の変更は大きくなると思います。強風で方向が大きく変わることもあります。萎れかけたら直ぐに蔓の傷、害虫などのチェックは行っています。

・ 質問1
植物の生理学的障害の中に、方向感覚障害と言うのがあるようですが、この現象もこの障害に該当するのでしょうか?また、この障害の原因は解明されているのでしょうか?

・ 質問2
Clematis という私のホームページ(日本語&英語)でこの現象を紹介しようと思っているのですが、方向感覚障害に対する適切な英語表現をご教示下さい。
参考URL: http://www.ne.jp/asahi/clematis/best-shots/index.htm
TomaTomo さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。

ご質問にある「植物の生理学的障害の中に、方向感覚障害と言うのがあるようですが」と記載されている内容はどのような情報に基づくものでしょうか。植物学ないし植物生理学の用語としては使用されていませんので、どのような現象を示すものか分かりかねます。

しかし、植物は方向を感知します。植物の地上部が光の来る方向や重力の方向を感知して屈曲します。光の来る方向に曲がる性質を正の光屈性、重力の方向と反対の方向に曲がる性質を負の重力屈性とよんでいます。根では正の重力屈性、より湿度の高い方向へ曲がる水分屈性などがあります。また、つる植物のように支えによじ登る植物では接触することで曲がる接触屈性という性質があるためによじ登ることが出来ます。巻き髭が巻き付くのも接触屈性の結果です。組織が他のものに接触することで引き起こされる屈性です。英語では屈性をTROPISMと言い、光屈性、重力屈性、水分屈性、接触屈性はそれぞれ phototropism, gravitropism, hydrotropism, thigmotropismと言っています。また、花粉管が胚珠の方向に進むのは、胚珠からだす化学物質を感知して方向を決めていますので化学屈性(chemotropism)といえます。このようにいろいろな刺激を感知し刺激の来る方向を知って成長運動をしていますので、場合によっては「方向感覚がある」と情感を込めて表現することがあるかも知れません。Tropismがおこる仕組み、光、重力などを感知する装置は分かっています。屈性をおこさない変異種はたくさんありますが、「方向感覚障害」とは言っていません。本来つる植物であるアサガオが巻き付かない変異種がありますが、これはある遺伝子が変化して働かなくなったためによじ登り性を失ったことが分かっています。


ご質問に記載されている現象はどこに方向性が関与しているのか分かりませんし、これらの屈性とは違ったもののようです。集団の一部に生育異常が観察されるものですので、あえて想像を逞しくすれば、個体間の競争(密植やアレロパシー-他感作用-による)、病気、何らかの傷害を受けたなどが考えられます。

JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2009-12-25
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