一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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大豆はなぜタンパク質を多く含むのですか?

質問者:   大学生   はりやん
登録番号2126   登録日:2009-12-22
豆類はエンドウやインゲンのように炭水化物が多いもの、大豆のようにタンパク質が多いもの、アーモンドやピーナッツのように油脂の多いものの3つに分けられると思います。
栄養成分表では炭水化物の多いものと大豆をあわせて「豆類」とし、油脂の多いものを「種実類」と分類しています。

食用種子で油脂の多い豆類と炭水化物の多い豆類は種類が多いですが、タンパク質を多く含んでいる豆は大豆だけなので、大豆だけが特殊なように思います。
油脂やタンパク質を多く含む豆の発生学的な利点は1529(2008年1月26日)のものに書いてありました。
系統分類学的なメリットや、大豆だけなぜタンパク質を多く含むように進化したのかをおしえていただきたいです。またはこのような内容が記載されている本をおしえていただきたいです。

というのも、日本人はエネルギー源となる米の稲作によって長く生きのびてきましたが、米の制限アミノ酸を補うのに大豆が大きな役割を果たしています。
タンパク質性食品といえば肉類、魚介類、卵類ですが、これらはすべて動物性です。運動するための筋肉を持つので、アミノ酸やタンパク質を合成する能力が高い理由がわかります。
しかし大豆は植物で、筋肉を持つ必要がないのに種子にはタンパク質を多く含んでいます(乾燥あずきは20%ですが乾燥大豆は35%)。不思議です。

よろしくお願いいたします。
まず、種子は次世代の植物体として育つ胚をもっている。種子は発芽(胚の成長開始)すると、幼植物体が光合成で自立的に栄養を供給できるようになるまで、主として胚乳に蓄えておいた貯蔵物質を分解して必要な栄養分を幼植物体に供給する。貯蔵物質は植物の種によってさまざまであるが、大体、炭水化物、脂肪、タンパク質である。どの物質を主に貯蔵しているかによって脂肪腫種だとか、タンパク種子だとかわけますが、どれか一種類しか貯蔵していないというのではありません。ただ、量の問題です。これらのことは、過去の質問への回答をご覧下さい。参考になるのもは、旧い順に、登録番号0290, 登録番号0431, 登録番号1125, 登録番号1795,登録番号1881,登録番号2109 です。

 質問の中の、「大豆は植物で、筋肉を持つ必要がないのに種子にはタンパク質を多く 含んでいます(乾燥あずきは20%ですが乾燥大豆は35%)。不思議です。」と言う疑問はふしぎは質問ですね。タンパク質は別に動物の筋肉のような組織の組成だけではありません。バクテリアからヒトまでタンパク質は様々なところでまた、さまざまな役割を持って使われているのはご存知でしょう。植物にとって、タンパク質の利用の仕方の一つは、種子にみられる貯蔵タンパク質です。貯蔵タンパク質はそれ自体機能性がある訳ではありません。

 そこで、「大豆だけなぜタンパク質を多く含むように進化したのか」という疑問ですが、タンパク質を多く含む種子は大豆だけとはかぎりません。大豆は、たまたま、 ヒトが食用として目をつけ、野生型(Glycine soya Siebold & Zucc.) から育種によってつくりあげてきたもの(Glycine max.(L.) Merr.)ですからよく知られているわけです。植物は進化の過程で様々生存の手段を獲得してきました。それは、どのような環境で進化してきたかにも関係があるでしょう。マメ科の植物の種子は種によって10% ~ 80% のタンパク質を含有する事が知られています、また、タンパク質の種類も200種類以上あります。一般に広く栽培されているマメ科の穀類は20%~ 40% のタンパク質含量(乾燥量当たり)です。

 そこで、疑問を「なぜマメ科の植物の種子は一般にタンパク質を多く含むようになったのか」という問いに置き換えてみます。残念ながら、回答は推測するしかありません。ただ、マメ科の植物が他の植物と異なる点は、根が根粒菌と共生することによって、空気中の窒素を固定しているという事です。一般に、マメ科の植物は他の植物に比べて種子と葉
におけるタンパク質含量が多いのです。このことは、窒素固定による多量の窒素獲得と関係しているのではないかと思われています。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2009-12-24
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