一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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植物:シモバシラ(シソ科)について

質問者:   一般   kazuko
登録番号2128   登録日:2009-12-29
シモバシラに大変興味があり、花・種・氷花を撮っております。
特に、氷の花について知りたく、どのような条件でできるのかなど、
気温、湿度、その日の長さなどを観察しております。
下記の質問4点についてご返答いただけると幸いです。

*なぜ??シモバシラや他数種類のシソ科の花の根元に
氷の花ができるのか、植物学上の目的・意味があれば知りたいのです。

*また、ひとつの花の中心部分に近付いて見てみると、
白い糸状のようなものが見えたのですが、これは何でしょうか。

*茎の中心の白いものについても教えていただけますでしょうか。

*茎がぼろぼろになっていく様子を見ましたが、氷の花との
関係はありますでしょうか。

シモバシラについての文献などございましたら、
教えて下さると幸いです。
kazuko さん:


みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。

シモバシラは特に美しい「氷の花」を咲かせることでたいへん多くの人が関心をもたれており、江戸時代にすでに記載があるようです。異なった内容のご質問がありますので、質問項目毎にお答えします。ご質問の主旨がはっきりしない項目もあり、主旨を推定しましたが、誤解していましたらご指摘ください。


*なぜ??シモバシラや他数種類のシソ科の花の根元に氷の花ができるのか、植物学上の目的・意味があれば知りたいのです。

シモバシラによる霜柱の形成は純粋に物理的な現象です。地中からの水の通路や茎の状態変化については諸説あるようですが、枯死した茎の維管束と髄、皮層との間にできた空隙内を水が毛管現象で上昇し、地上部で氷結するもののようです。また、シモバシラの茎を切り取り水に挿した状態で、零下温に置けば実験的に霜柱形成をおこすことも確認されています。これらのことを考えると、霜柱形成が植物の生存にとって有利に働いているとは考えられません。


*また、ひとつの花の中心部分に近付いて見てみると、白い糸状のようなものが見えたのですが、これは何でしょうか。

 図鑑類で拡大写真を見る限り、雄しべ(4本)か雌しべ(1本)を指しているのではないかと思います。雄しべ、雌しべに、あるいは花冠内側に目立った綿毛があるとの記載はありません。牧野新日本植物図鑑によれば株によって雄しべが雌しべよりも長いもの、逆に雌しべが雄しべよりも長いものがあるとされています。


*茎の中心の白いものについても教えていただけますでしょうか。

  どの部分を指しておられるのか判然としませんが、茎の中心には髄という柔組織があります。横断面をみると中心に白い組織が詰まっていますが、これが髄です。


*茎がぼろぼろになっていく様子を見ましたが、氷の花との関係はありますでしょうか。

  最初の氷結がおきると氷結時の力で茎の皮層、表皮の部分が割れるので「ぼろぼろ」に見えるのかも知れません。その後、地中からあがってきた水が毛管現象で割れ目に滲入してくればその部分から花弁状に氷片ができるようです。


*シモバシラについての文献などございましたら、教えて下さると幸いです。

とりあえず目に付いたものだけを挙げます。

高橋隆平・木村和義:氷の花を咲かせる植物.遺伝,44(11),51-52 (1990)

犀川政稔:シモバシラによる霜柱形成におけるいくつかの新知見 東京学芸大学紀要 自然科学系 58:151-161(2006)

犀川政稔:シモバシラによる霜柱形成と木部に出来る二次的な水の通路 東京学芸大学紀要 自然科学系 59:55-59(2007)

(この論文には古い文献が引用されていますのでご参考になると思います。)

JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2010-01-08
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