植物Q&A

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植物の自殖について

質問者:   その他   marcopollen
登録番号2132   登録日:2010-01-14
主に一年草園芸草花を中心に、種子から育てる園芸を楽しんでいます。
近交弱勢について調べていて、疑問に思ったことがあり
質問させていただきます。

植物には、自家受粉を回避する仕組みがたくさんありますが、
植物によっては、自分の花粉を受粉して自殖できるものもあります。
そこで、自殖によってできた種子から育てた個体の遺伝子についての質問です。

もし一個体しかそこに存在しない一年草植物があり、
そこから種子が採れた場合(ほかからの花粉の介在はないものとします)、
これらの種子から育てた植物の遺伝子は
一粒一粒どの種子もまったく同じになるのでしょうか?
それとも遺伝子の組み合わせの変化がおきて
表現型の違うものが発現する可能性があるのでしょうか?

どうぞよろしくお願いいたします。
Marocopollenさま

ご質問の一年生植物で自家受精する植物は、同じ個体のおしべからの花粉がめしべに受粉し、種子ができます。この様に自家受粉、受精する植物は、身近なイネ、ダイズ、コムギ、トマトなどの作物でも見られます。これらの植物は毎年、栽培を繰り返すと、遺伝子構成(2n)がほぼ等しい(めしべ、おしべに由来する遺伝子組成がほぼ等しい)植物となります。動物でも純系交配(同じ親から生まれた雌雄間での交配)を繰り返し遺伝子的に等しい純系の実験動物が作り出されていますが、ほぼ純系にするには20世代以上の繰り返しが必要です。自家受粉する植物でも完全な純系にするためには、例えば、イネの穂などをセロハン紙で覆って他の個体の花粉が受粉しないようにして栽培を繰り返せば、全ての種子が純系に近い種子を得ることができるでしょう。

これらの種子の遺伝子的な“純度”はそれまでに何度も自家受粉を繰り返してきたためにすでに高いと思われますが、上に述べたように他の個体の花粉がかからないようにすればより確実に、穂の種子全部を“純度”の高い種子(2n)にすることができます。このような自家受精を繰り返し遺伝子の“純度”が高くなると、めしべ、おしべに由来する遺伝子が全く同じになり、生育に余り有利でない遺伝子もホモの状態になり、ヘテロの状態では発現しなかった遺伝子が発現するようになります。また、自家受粉を繰り返し遺伝子がホモの状態になると、何か生育環境条件が変動した時、ヘテロの場合に比べ対応できる範囲が狭くなります。従って、一般的に遺伝子の“純度”が高くなるとその種の生育にとって不利になります。このためもあって、両性花をもつ植物のうち半分以上が自家受粉しても受精できない自家不和合性をもっています。自家不和合性に関与する遺伝子も解明されていますが、これをもっている植物が多いことは全ての遺伝子がホモになってしまうことは、その種にとって不利になることを示しています。

それでは、なぜ、生存に不利になることが避けられない、さらに、これを避けるためにいろいろな機構によって自家受粉しないようにしている植物が多いにもかかわらず、なぜ自家受精を選んだ植物がいるのか、については次のように考えられています。上にあげたいくつかの自家受粉、自家受精できるイネなどの花は小さく、また、花の数が多いのが特長です。自家受精できることによって昆虫の助けを借りなくとも、同じ花の中で受精ができるため、昆虫を引き寄せるため、目立つ色の大きな花弁、蜜などがなくとも受粉、受精でき、低コストで多数の子孫(種子)を作り出すことができます。恐らく、この利点が、遺伝子“純度”が高くなるための不利な点よりも大きいため、自家受粉性の植物は残ってきたと考えられています。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2010-01-19
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