一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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なぜ、クリにはトゲがあるのか。

質問者:   小学生   いぶき
登録番号2139   登録日:2010-01-31
理科の授業で、「びっくり新聞」という新聞をつくっています。
名前のゆらいに使った「びっくり」の「くり」について質問します。

なぜ、くりの実の外がわにはイガがあるのでしょうか。
動物に食べられないようにするためかと思いますが
ほかのブナ科のどんぐりやシイにはトゲがありません。

なぜ、くりにだけイガがあるのでしょうか、
くりはとてもおいしいから動物にねらわれるからでしょうか。
昔、ねらわれたからトゲが生まれたのでしょうか。
バラのトゲといっしょなのですか、
ハリネズミやヤマアラシと同じでしょうか、

教えてください。
いぶき 様

みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。
でも、こういう何故の質問はとても答えにくいのです。中学生の頃、生物の先生に「レンコンには何故穴があるのですか?」という質問をしたことがありました。先生は「レンコンに聞いて、レンコンが答えてくれれば分かるのだけれど、レンコンに聞いてもレンコンは答えてくれないので分からない。」とおっしゃいました。その時は、とんでもない先生だと思ったのですが、その後、60年あまり植物とつき合って来て、今ではそれが正解なのだと思うようになっています。

ということで「イガに聞いても、イがは答えてくれないので分からない。」というのが正解だと思うのですが、いぶきさんに、とんでもない回答者だと思われたくないので、私なりに考えたイガの役割について書いてみます。

まず、いぶきさんが考えておられる、「動物に食べられないようにする働き」ですが、イガは実が熟す頃、四つに割れて、実を落としてしまうので、その役には立っていないと思います。役に立っているとすれば、虫の攻撃を防ぐことについてではないかと思います。

クリの実の中に小さなウジのような虫がいるのを見たことがあると思います。ゾウムシの一種のクリシギゾウムシの幼虫です。このゾウムシのメスはイガがまだ緑色をしている頃、吻(ゾウムシの口です)でイガと実の皮に穴を開け卵を産みつけます。卵はクリの実の中で孵って成長します。イガがあってもゾウムシの攻撃を防ぐことが出来ない訳ですが、もし、イガがなかったら、もっと色々な虫から攻撃を受けるのではないかと想像されます。

シロイヌナズナという植物の毛のある株と毛のない株を並べておくと、アリマキは毛のない株ばかりに行くそうです(登録番号 1993)。イガのないクリを作ることが出来れば、この考えが正しいかどうか確かめることが出来るのではないかと思っています。

JSPPサイエンス・アドバイザー
柴岡弘郎
回答日:2010-02-05