一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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コーヒー(アラビカ種)の種子の成長過程におけるメカニズムと構造

質問者:   自営業   かくれんぼう
登録番号2147   登録日:2010-02-11
コーヒーの抽出のメカニズムを知りたく、まずは焙煎する前の種子の構造について詳しく教えてください。私の知る限りでは、豆は一般に多孔質(微細)構造と呼ばれたくさんの穴(孔)があり、また沢山の細胞のなかに養分(?)を蓄えているという程度です。ただこの穴と細胞がどのくらいのサイズでどういう形状なのか具体的にイメージできません。またコーヒーの種子はパーチメントとよばれる硬い殻にすっぽりと覆われています。したがって種子の成長過程において、どのように養分(成分)が各細胞のなかに取り込まれるのか知りたいのです。わたしの想像できる範囲ではパーチメントを通過した成分が、この微細な穴を通じて各細胞に蓄えられるのではないかと考えていますが、まちがいでしょうか?
かくれんぼう さま

木で成熟したコーヒー果実は、収穫後乾燥し、果実の果皮、その内側の果肉を取り除き、中に含まれている種子(胚乳と胚芽)がコーヒー豆とよばれています。これを焙煎して市販されています。身近なイネの種と比較すれば、イネの穂のもみ殻が果皮に相当します。イネでは、果肉はほとんどありませんが、コーヒーもイネと同じように、リンゴやカキなどのいわゆる果物と異なり、果肉はそんなに厚くはありません。果肉の内側に、内果皮とよばれる皮に包まれて、種子がはいっています。種子を覆っている皮はコーヒー豆の場合、パーチメントともよばれていますが、これが種皮に相当します。

ダイズやエンドウの種子は発芽して成長すると子葉になるところに、発芽して光合成が始められるようになる迄の養分を蓄えています。しかし、コーヒーはイネと同じように胚乳に養分を蓄えています。イネの種子は(精米の時に削りとられてしまう)胚芽が成長してめばえになりますが、めばえが成長して光合成ができるまでの養分は、(大部分が胚乳に相当する)精米したコメ粒に蓄えられています。種皮に包まれたコーヒー種子も胚乳と胚芽をもっています。コーヒー種子が発芽するとき、イネと同じように、胚芽が成長してめばえになりますが、めばえが光合成できるようになるまで成長するのに必要な養分は胚乳から供給されます。

ところでコーヒーの種子が成熟するとき、胚芽や胚乳を作り上げるための成分がどのようにして種皮(パーチメント)を通りぬけるかどうかについてのご質問ですが、他の多くの植物の種子ができるときの機構からみて、コーヒー種子を作り上げる成分は種皮を透過して送り込まれるのではないと思われます。花が受精してめしべが肥大して種子に成長しますが、これらが成長するための全ての成分は花がついていた枝の維管束を通って、葉で合成された糖やアミノ酸などが種子を合成するために送り込まれます。これらを原料として、コーヒーの胚乳、胚芽、種皮、果皮など種子の全ての成分が合成されていくと考えられます。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2010-02-19
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