一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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断根した根からの新根の発生についての規則性について

質問者:   教員   ユッキー
登録番号2150   登録日:2010-02-17
質問その1
樹木の根を断根したところから新たな根、白根が発生しますが、ある大学の先生の講義を聴いたところ、5〜6回の枝分かれをすると話をしていました。
樹木の根には、発根数や根の枝分かれに規則性があるでしょうか。

質問その2
白根の寿命は1週間程度との話を聞きました。樹木は、白根からコルク表皮に
包まれた支持根に変化するのでしょうか。
2点教えて下さい。
ユッキー様


みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。
ご質問の中の「白根」という語は植物学用語ではないので、園芸関係の用語かと思い、園芸大百科事典(講談社)や園芸植物大事典(小学館)を調べて見ましたが、見つかりませんでした。そこで、多分、根を切ったことによって生じた新しい側根のことだろうと思い、側根あるいは新しく形成された側根という語を用いてお答えすることにしました。



質問1)

側根は元の根の木部の位置に形成されます。従って、一つの面では木部の数より多くは出来ません。そういう意味では場所、数に規則性があると言えますが、側根が形成されるかどうか、伸びて来た側根が枝分かれをするかどうかは、内的、外的な要因によって左右されますので、根全体で見れば、規則性はないと考えたほうが良いと思います。

側根の数ですが、主に内的な要因、特に植物ホルモンの一種のオーキシンの供給量によって変わります。オーキシンは側根形成に必須で、オーキシンがないと側根は形成されません。オーキシンは地上部から供給されます。地上部のオーキシンの供給源である芽や若い葉を取り除き、切り口へのオーキシンの供給量を減らすと、形成される側根の数は減少します。枝分かれですが、これは主に外的な要因、特に土壌中の窒素肥料の量に左右されます。窒素肥料の少ない場所に植えられている植物の根の近くの限られた場所に窒素肥料を与えると、与えられた場所の近くの根の側根形成や形成された側根の枝分かれが促進されます。


質問2)

新しく形成された側根の寿命ですが、形成された側根はすべて一人前の根に発達する能力を備えています。ただ、一人前に発達するかどうかは、形成された側根自身が決める事ではなく、親植物の都合によって決められています。
根はエネルギーを稼ぎ出す事がなく、専らエネルギーを消費する器官ですので、形成された側根が水や無機栄養の取り込みにあまり貢献しない場合、親植物はその側根の発達を助けません。側根は発達することなく枯死します。逆に、水や無機栄養分の取り込みについて、新しく形成された側根に手伝って貰いたい状況にあれば、新しく形成された側根を一人前に発達させることになります。

JSPPサイエンス・アドバイザー
柴岡弘郎
回答日:2010-03-09
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